めんどりの死
グリム童話
にわとり小屋の、それはそれは賑やかな朝のこと。おんどりくんとめんどりさんが、庭で大きくておいしそうな木の実を見つけました。
「わあ、見て!なんて大きな木の実でしょう!」めんどりさんは大喜び。
「半分こにしようか?」おんどりくんが言いましたが、めんどりさんは待ちきれなくて、大きな木の実をまるごと ごっくん!と飲み込んでしまいました。
ところが大変!木の実は大きすぎて、めんどりさんののどにつかえてしまったのです。
「うぐぐ、のどに つまっちゃった!」めんどりさんは苦しそう。
「大変だ!お水、お水!」おんどりくんは慌てて、井戸さんのところへ走りました。
「いどさん、お願い!めんどりさんが大変なんだ!お水を少し分けておくれ!」
井戸さんは言いました。「いいとも。でも、その前に、はなよめさんから赤いリボンをもらってきておくれ。そうしたらお水をあげよう。」
おんどりくんは、今度ははなよめさんのところへ大急ぎ。
「はなよめさん、お願い!赤いリボンをくださいな。いどさんが、リボンがないとお水をくれないんだ。めんどりさんが木の実をのどにつまらせて、苦しんでいるんです!」
はなよめさんはびっくり。「あら大変!でもね、私の大事なくしが、やなぎの木にひかかっているの。それを取ってきてくれたら、リボンをあげるわ。」
おんどりくんは、休む間もなくやなぎの木のところへ。
「やなぎのきさん、お願い!はなよめさんのくしを返してくださいな。くしがないとリボンをくれなくて、リボンがないといどさんがお水をくれなくて、めんどりさんが…!」
やなぎの木はゆっくりと答えました。「ふむ。いいだろう。だが、のどがカラカラなんだ。そこの小川さんから、お水を一杯くんできておくれ。そうしたら、くしを返してやろう。」
おんどりくんは、もうへとへとでしたが、最後の力をふりしぼって小川さんのところへ。
「小川さん、お願い!やなぎのきさんにお水を一杯くださいな。そうしないと、はなよめさんのくしを返してくれなくて、リボンももらえず、いどさんもお水をくれず、めんどりさんが、めんどりさんが死んじゃうよ!」
心優しい小川さんは、すぐに言いました。「それは大変だ!さあ、どうぞ!」そして、きれいなお水を分けてくれました。
おんどりくんは小川さんにお礼を言って、お水をやなぎの木さんへ運びました。やなぎの木さんはお水を飲むと、はなよめさんのくしを返してくれました。
おんどりくんはくしを持ってはなよめさんのところへ。はなよめさんは喜んで、赤いリボンをくれました。
おんどりくんは赤いリボンを持って井戸さんのところへ。井戸さんは約束通り、お水をたっぷりくれました。
おんどりくんは、お水をくわえて、めんどりさんの元へ大急ぎで戻りました。
「めんどりさーん!お水だよ!」
でも、めんどりさんはもう、ぴくりとも動きません。大きな木の実をのどにつまらせたまま、静かになってしまっていたのです。
おんどりくんは悲しくて悲しくて、「コケコッコー!コケコッコー!」と大きな声で泣きました。
それを聞いた井戸さんは、悲しくて悲しくて、自分の水がぜんぶ溢れ出てしまいました。
それを知った花嫁さんは、悲しくて悲しくて、きれいなドレスをビリビリに破いてしまいました。
それを聞いた柳の木さんは、悲しくて悲しくて、自分の葉っぱをぜんぶハラハラと落としてしまいました。
そして、それを聞いた小川さんは、あまりの悲しさに、流れるのをやめてしまいましたとさ。
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