• 幸運の三人

    グリム童話
    あるところに、年老いたお父さんがいました。お父さんには三人の息子がいましたが、もうすぐ天国へ行く時間が近づいていました。
    「息子たちや」お父さんは言いました。「わしにはもう、お前たちに残してやれるような立派な財産はないんじゃ。ここに、おんどりが一羽、古い大鎌が一本、そして小さな猫が一匹おる。これを一つずつ分け与えよう。これらを持って広い世界へ出てごらん。きっと賢く使えば、お前たちの役に立つはずじゃよ。」

    一番上のお兄さんはおんどりをもらい、二番目の息子は大鎌を、そして一番下の息子は猫をもらって、それぞれ「いってきます!」と元気よく旅に出ました。

    さて、おんどりをもらった一番上のお兄さん。てくてく歩いていくと、ある島に着きました。その島の人たちは、なんと時計というものを全く知らなかったのです!夜が明けて、お兄さんのおんどりが元気よく「コケコッコー!」と大きな声で鳴くと、島の人たちはびっくり仰天!
    「おお、なんと賢い鳥だ!朝が来たことを教えてくれるぞ!」
    「素晴らしい!これで寝坊することもなくなるわい!」
    島の人たちは大喜びで、王様はおんどりをたくさんの金貨と交換してくれました。お兄さんは大金持ちになりました。

    次に、大鎌をもらった二番目の息子。彼もまた、てくてく歩いていくと、別の島に着きました。その島では、麦を収穫するのに、みんなが一本一本、手で引き抜いていたのです。それはそれは大変な作業でした。
    二番目の息子は持っていた大鎌を取り出し、「シャッ、シャッ!」と軽やかに麦を刈ってみせました。
    島の人たちはまたまたびっくり仰天!
    「なんだあの道具は!あっという間に麦が刈れるぞ!」
    「魔法のようだ!」
    王様は、その便利な大鎌を、馬一頭に積めるだけの金貨と交換してくれました。二番目の息子も大金持ちです。

    最後に、猫をもらった一番下の息子。彼もまた、てくてく歩いていくと、これまた別の島に着きました。ところがこの島、大変なことになっていました。お城から村の家まで、どこもかしこもネズミだらけだったのです!食べ物はかじられるし、夜はうるさくて眠れないし、島の人たちはほとほと困り果てていました。
    一番下の息子が猫を放すと、猫は「ニャー!」と一声鳴いて、あっという間にネズミを捕まえ始めました。次から次へとネズミを捕まえる猫の姿に、島の人たちは三度びっくり仰天!
    「この素晴らしい生き物はなんというのですか!」
    「ネズミ退治の天才だ!」
    王様は、このネズミ捕りの名人である猫を、ロバ一頭に積めるほどの金貨と交換してくれました。一番下の息子も、やっぱり大金持ちになりました。

    しばらくして、三人の息子たちは故郷へ帰る途中でばったり出会いました。
    「やあ、兄さん!」「おお、弟よ!」
    お互いの立派な姿と、たくさんの金貨を見て、またまたびっくり!
    「おんどりがこんなに価値があるなんて!」「大鎌がこんなになるとは!」「うちの猫もすごかったんだよ!」
    三人は、お父さんのくれたものが、本当に素晴らしい宝物だったことに気づきました。
    そして、お父さんに心から感謝しながら、三人仲良く、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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