ヨリンデとヨリンゲル
グリム童話
深い深い森のそばに、ヨリンデという可愛らしい女の子と、ヨリンゲルという心優しい男の子が住んでいました。二人はとっても仲良しで、もうすぐ結婚する約束をしていました。毎日、二人で森の近くを散歩するのが大好きでした。
その森の奥には、古くてちょっと怖いお城がありました。そこには一人のおばあさんが住んでいましたが、実はこのおばあさん、怖い魔女だったのです。昼間は猫やフクロウの姿に変わり、夜になると人間の姿に戻るのでした。もし誰かがお城の十五歩以内に近づくと、魔女は魔法でその人を石のように動けなくしてしまいます。そして、可愛らしい女の子は小鳥に変えて、鳥かごに入れてしまうのでした。
ある晴れた日、ヨリンデとヨリンゲルは森へお散歩に出かけました。「ねえ、ヨリンゲル、あのお城には近づいちゃだめよ」とヨリンデが言いました。「うん、わかってるよ。でも、今日は天気がいいから、もう少しだけ森の奥まで行ってみようか」とヨリンゲル。おしゃべりに夢中になっているうちに、二人はだんだん森の奥へ。夕方になり、太陽が沈み始めると、二人は道に迷ってしまったことに気づきました。ヨリンデは悲しそうな声で歌い始めました。それはナイチンゲールのような美しい歌声でした。
ふと見ると、目の前には魔女のお城が!ヨリンゲルがヨリンデの方を振り向くと、なんとヨリンデは可愛らしいナイチンゲールに姿を変えられてしまっていたのです!そして、ヨリンゲル自身は、足が地面にくっついたみたいに、一歩も動けなくなってしまいました。魔女がニヤリと笑いながら現れ、ナイチンゲールになったヨリンデを小さなかごに入れて、お城の中に持っていってしまいました。
やがて魔法が解け、ヨリンゲルは動けるようになりましたが、ヨリンデはいません。ヨリンゲルは悲しくてたまりませんでした。「ああ、僕のヨリンデ!」何日も何日も、ヨリンデのことを思って泣きました。
そんなある夜、ヨリンゲルは不思議な夢を見ました。夢の中で、彼は真ん中がキラキラ光る、美しい紫色の花を見つけました。その花を手に取ると、どんな魔法も解けるというのです。
目が覚めたヨリンゲルは、「あの花を見つけるんだ!」と決心しました。彼はたった一人で、その紫色の花を探す旅に出ました。来る日も来る日も探し続け、八日が過ぎました。九日目の朝早く、朝露に濡れた草むらの中で、ヨリンゲルはついに夢で見たのと同じ、真ん中が大きな真珠のように光る、それはそれは美しい紫色の花を見つけたのです。
ヨリンゲルはその花を大切に持って、魔女のお城へ向かいました。お城の門は固く閉ざされていましたが、花で門に触れると、不思議なことに門はひとりでに開きました。中へ入ると、魔女が怒った顔で出てきて、毒を吐きかけようとしましたが、ヨリンゲルが花を魔女に向けると、魔女は何もできなくなってしまいました。花が魔女の力を封じ込めたのです。
お城の中には、たくさんの鳥かごがずらりと並んでいて、中にはいろいろな小鳥がいました。その数は七千羽もいたそうです!でも、どのナイチンゲールがヨリンデなのでしょう?魔女は一つの鳥かごを指さし、「このナイチンゲールを連れて行け。だが、もし間違えたらお前も終わりだ」と意地悪く笑いました。
ヨリンゲルは困りましたが、紫色の花が助けてくれると信じました。彼が花を持って鳥かごに近づくと、もしそのかごがヨリンデのものでなければ、花は力を失ってしまうでしょう。彼は一つ一つのかごに花を近づけました。そして、ついに一つの鳥かごに花をそっと触れると、ナイチンゲールはみるみるうちに美しいヨリンデの姿に戻りました!ヨリンデはヨリンゲルの首に抱きつきました。
ヨリンゲルは、他の鳥かごにも一つ一つ花で触れていきました。すると、小鳥たちは次々と可愛らしい女の子の姿に戻っていきました。みんな大喜びです。
ヨリンデとヨリンゲルは、助け出された女の子たちと一緒に、自分たちの村へ帰りました。そして二人は結婚して、いつまでもいつまでも幸せに暮らしたということです。
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