羊飼いの娘と煙突掃除人
アンデルセン童話
あるお家のテーブルの上にはね、たくさんの飾りが置いてありました。その中に、羊飼いの娘の小さな人形と、煙突掃除屋さんの人形がいました。二人は陶器でできていて、とっても仲良しだったんです。
ところが、同じテーブルの上には、あごをカクカクさせることのできる、中国人の古い人形もいました。このおじいさん人形は、羊飼いの娘さんと結婚したいと思っていました。「わしの孫娘にふさわしい」なんて言ってね。でも、羊飼いの娘さんは、それが怖くてたまりません。
「どうしよう…」羊飼いの娘さんが困っていると、勇敢な煙突掃除屋さんが言いました。「大丈夫、僕と一緒にここから逃げよう!広い世界へ行こうよ。」
羊飼いの娘さんは、煙突掃除屋さんの手を取りました。「うん、一緒に行くわ!」
二人はそっとテーブルの脚を伝って降りました。そして、暗くて長い煙突の中を、一生懸命登っていきました。煙突の中は真っ暗で、すすだらけ。羊飼いの娘さんは、だんだん心細くなってきました。「ねえ、もう戻りたいわ…私、怖いの。」
やっとのことで煙突のてっぺんに出ると、そこには広い夜空と、キラキラ光る星がたくさん!煙突掃除屋さんは「わあ、すごいだろう!」と得意顔です。でも、羊飼いの娘さんは、広すぎる世界を見て、もっと怖くなってしまいました。「私、割れちゃうかもしれない。おうちに帰りたい…」と泣き出してしまいました。
煙突掃除屋さんはがっかりしましたが、優しい彼のこと、娘さんの言う通り、一緒に戻ることにしました。また暗い煙突を降りて、元のテーブルの上に戻りました。
部屋に戻ってみると、びっくり!あの中国人の古い人形が、床に落ちて割れてしまっていたのです。お家の人が接着剤でくっつけてくれましたが、もうあごをカクカクさせることはできなくなっていました。だから、羊飼いの娘さんに「結婚しろ」と命令することもできなくなりました。
これで、羊飼いの娘さんは無理やり結婚させられる心配もなくなりました。煙突掃除屋さんと羊飼いの娘さんは、元のテーブルの上で、いつまでも仲良く暮らしましたとさ。もちろん、いつか二人とも、陶器だから割れてしまうその日までね。
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