• 氷の乙女

    アンデルセン童話
    むかしむかしとは、すこしちがうお話のはじまりです。

    カイとゲルダという、とってもなかよしなふたりが、となりどうしに住んでいました。ふたりの家のまどべには、それはそれはきれいなバラの花が、いつもニコニコさいていました。

    ある日のこと、空からキラキラしたものが、たくさんふってきました。それは、わるい魔法使いがつくった、こおりの鏡のかけらでした。その小さなかけらのひとつが、あそんでいたカイの目と、むねの奥に、ツン!とささってしまったのです。
    さあ、たいへん! カイはとつぜん、つめたい心の子になってしまいました。「バラなんて、きらいだ!」「ゲルダなんて、もう知らない!」なんて言いだすしまつ。

    そんな冬の寒い日、まっしろな雪の馬車にのった、うつくしいけれど、どこかこおりのように冷たい「雪の女王」がやってきました。女王はカイをみると、フフンとわらって、カイを馬車にのせて、北のとおーい、こおりのお城へつれていってしまいました。

    ゲルダはびっくり!そして、とってもかなしくなりました。「カイをさがしにいかなくちゃ!」
    ゲルダの、ながくてちょっぴりドキドキする旅のはじまりです。

    まず、川に「カイはどこ?」ってたずねました。川はしらないって。
    次に、お花畑につきました。お花たちは、カイのことをおしえてくれませんでしたが、ゲルダにやさしくしてくれました。
    それから、かしこいカラスの夫婦に道をおしえてもらい、ใจดี(やさしい)お姫さまと王子さまにも会いました。ふたりはゲルダにあたたかい服と、金の馬車をくれました。
    でも、その馬車が山賊におそわれてしまいます!でもだいじょうぶ。山賊のむすめが、なかまのトナカイをゲルダにかしてくれて、雪の女王のお城の場所をおしえてくれたのです。

    トナカイのせなかにのって、ビューン!と風をきって、ゲルダはついに、キラキラかがやく氷のお城へたどりつきました。
    お城のなかは、ぜーんぶ氷!さむくて、しーんとしています。
    そこでゲルダは、こおりのつみきで、なにかむずかしいパズルをしようとしているカイを見つけました。でも、カイはゲルダのこと、わすれちゃったみたい。

    「カイ!」ゲルダは大きな声でよびかけ、カイにとびつきました。そして、あたたかいなみだが、ポロポロとカイのほほをつたい、むねにおちました。
    すると、ふしぎ!カイの目とむねにささっていた、こおりのかけらが、なみだといっしょにスーッととけてながれでたのです。
    「ゲルダ!」カイは、やっとゲルダのことを思い出しました。

    ふたりは手と手をとって、大よろこび。さあ、おうちへかえりましょう!
    長い旅の帰り道、助けてくれたみんなに「ありがとう」を言って、ふたりは自分たちの家にもどりました。
    家のまどべのバラは、まえよりもっともっと美しくさいていて、ふたりをむかえてくれました。
    そして、カイとゲルダは、それからもずーっと、世界でいちばんのなかよしだったのでした。めでたし、めでたし。

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