太陽の輪
アンデルセン童話
ある晴れた朝、一本の太陽の光が、冒険に出かけることにしました。「どこへ行こうかな?そうだ、あの暗くて静かな建物の中をのぞいてみよう!」
光は細い窓の隙間から、そろーっと中へ入っていきました。そこは、石でできた冷たい壁の、小さな暗い部屋でした。部屋の隅っこには、しょんぼりした顔の男の人が一人で座っていました。「なんだか、かわいそうだな」光は思いました。
そのとき、光は男の人の足元、石の床のほんの小さな割れ目から、小さな緑色の芽が出ているのを見つけました。「わあ、こんなところに!」光はびっくりしましたが、なんだかうれしくなりました。
光は毎日、その小さな芽に会いに来ることにしました。男の人にも、少しでも明るい気持ちになってほしかったのです。次の日も、その次の日も、光はまっすぐに芽のところへ届きました。
男の人は、初めは気づきませんでしたが、ある日、足元でキラキラ光るものと、小さな緑の葉っぱを見つけました。「おや?」男の人は久しぶりに何かに興味を持ったように、じっとそれを見つめました。
それからというもの、男の人は、その小さな芽がかわいくてたまらなくなりました。毎日、大切に持っていた少しの水を分けてあげ、光がよく当たるように、そっと芽を動かしてあげました。
小さな芽は、太陽の光と男の人の優しさで、ぐんぐん大きくなりました。葉っぱも増えて、生き生きとしています。それを見ていると、男の人の心もだんだん明るくなっていきました。「君がいるから、僕は一人じゃない気がするよ」男の人は、小さな植物に話しかけるようになりました。
そしてある朝、男の人が目を覚ますと、なんと植物の先に、小さくて可愛らしい、白い花が一輪咲いていたのです!
「わあ、花が咲いた!きれいだなあ!」男の人は、まるで宝物を見つけたように喜びました。暗い部屋の中に、その花は太陽の光を浴びて、希望の色に輝いて見えました。
太陽の光と小さな花は、男の人に生きる勇気と喜びを教えてくれました。たとえどんなに暗くて寂しい場所にいても、小さな希望の光を見つけることができれば、心は温かくなれるんですね。
2086 閲覧数