すべてのものにはあるべき場所がある
アンデルセン童話
古い、とっても古いお屋敷がありました。そのお屋敷の中には、もっともっと古いものがたくさん住んでいました。
壁にかかった大きな絵は、いつも自慢げに言いました。「わしはもう何百年もここに飾られて、たくさんの人々を見てきたんだぞ!」
暖炉のそばに置かれた火ばさみは、カチャカチャと音を立てて言いました。「わしがいなければ、この家の暖炉の火はとっくに消えていたさ。」
部屋の隅っこにある糸車は、キーコキーコと小さな声で言いました。「私はね、昔々、お姫様のために美しい絹糸を紡いだこともあるのよ。」
みんな、自分がどれだけ古くて立派か、お互いに言い合っていました。
そんなある日、お屋敷にぴかぴかの新しいほうきがやってきました。
古いものたちは、新しいほうきを見て、ちょっと馬鹿にしたように言いました。
「なんだい、あの新しいやつは。私たちみたいに、立派な歴史もなさそうだね。」壁の絵が言いました。
「そうそう、私たちみたいに、大切な仕事もできないだろうさ。」火ばさみも同意しました。
でも、新しいほうきは何も言いませんでした。ただ黙って、毎日お部屋をきれいに掃きました。床の上のほこりも、隅っこのクモの巣も、ほうきはせっせと集めて、お部屋をぴかぴかにしました。
初めのうちは、古いものたちはほうきのことを見下していましたが、毎日きれいになっていくお部屋を見ているうちに、だんだんと考えが変わってきました。
「うむ、あのほうき、なかなかやるではないか。」壁の絵が感心したように言いました。
「確かに、あいつがいると部屋が気持ちがいいわい。」火ばさみもカチャリと音を立てました。
糸車も、優しく言いました。「私たちみたいに古くなくても、大切な役目があるのね。」
ほうきは、古いものたちのように立派な歴史を語ることはできませんでした。でも、お部屋をきれいに保つという、とても大切な仕事をしていました。
やがて、お屋敷の古いものたちはみんな気づきました。どんなものにも、ちゃんと自分の場所があって、それぞれに大切な役目があるのだということを。
それからというもの、古いものたちは新しいほうきを仲間として認め、みんな仲良く、静かにそのお屋敷で暮らしましたとさ。みんな、自分の場所で、自分の役目を果たしながらね。
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