年とったヨハンネの語る話
アンデルセン童話
みんな、聞いておくれ。ヨハンナおばあさんが、とっておきのお話をしてあげるよ。
あるところに、小さなスズメのチュン太がいました。チュン太は、自分が空を飛ぶのがとっても上手だって、いつもちょっぴり自慢に思っていました。「僕より速く飛べる鳥なんて、きっといないね!」なんて、よく言っていたものです。
ある晴れた日、チュン太は遠くでキラキラ光るものを見つけました。「わあ、あれはきっと素敵な宝物だ!僕が一番に見つけるんだ!」チュン太はそう思って、元気いっぱい飛び立ちました。
ビューン、ビューン!チュン太はどんどん高く、遠くへ飛んでいきました。他の鳥たちが「チュン太くん、どこへ行くの?」と声をかけても、「秘密だよ!一番乗りなんだから!」と、得意そうに答えるだけ。
でも、あまりにも高く、そして遠くまで飛んだので、だんだん風が強くなって、チュン太の小さな羽が疲れ始めました。下を見ると、お家も森も、みーんな小さく見えます。「あれ?ちょっと怖いかも…それに、お腹も空いてきたなあ。」
チュン太は大きな木の枝で一休みすることにしました。すると、下の方で、アリさんたちが列を作って、一生懸命食べ物を運んでいるのが見えました。ゆっくりだけど、みんなで協力して、着実に進んでいます。
そばでは、ミツバチさんがせっせと花の蜜を集めていました。ブンブンと楽しそうに、一つ一つの花を丁寧に回っています。
チュン太は、さっきまで追いかけていたキラキラ光るものを思い出しました。それは、朝露に濡れたクモの巣でした。太陽の光を浴びて、ダイヤモンドみたいに輝いていたのです。とってもきれいだったけれど、チュン太が想像していたような「宝物」というわけではありませんでした。
チュン太は思いました。「一番じゃなくても、速くなくてもいいんだなあ。アリさんやミツバチさんみたいに、自分のペースで、周りの景色を楽しんだり、みんなと協力したりするのも、とっても素敵だ。」
少し休んで元気を取り戻したチュン太は、今度は急がずに、ゆっくりと自分の巣に帰りました。途中、きれいな花を見つけて眺めたり、他の鳥たちとおしゃべりしたり。なんだか、前よりもっと、空を飛ぶのが楽しくなった気がしました。
ヨハンナおばあさんはにっこり。「どうだい?面白いお話だったかな?急ぐことだけが大切じゃないってこと、チュン太もわかったみたいだね。」
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