エービーシーの本
アンデルセン童話
あるところに、とってもえらいと思っているオンドリがいました。名前はコケコさんです。コケコさんは、毎朝一番に起きて、一番大きな声で「コケコッコー!」と鳴くのが自慢でした。
ある晴れた日、コケコさんが庭を散歩していると、キラキラしたものが落ちているのを見つけました。「おや?これはなんだろう?」それは、きれいな絵がたくさん描かれた本でした。表紙には「あいうえお」と、ふしぎな模様みたいな字が書いてあります。
コケコさんは本を開いてみました。「ふむふむ、なるほど…」と、賢そうな顔をしましたが、本当は読めません。それでも大きな声で言いました。「コケコッコー!コケコッコー!」本に書いてあるのは、どうやら「コケコッコー」ということらしい、とコケコさんは思いました。
そこへ、メンドリたちが集まってきました。「コケコさん、何を見ているの?」「これはすごい本だよ!ほら、あいうえおの本さ!」コケコさんは得意そうに言いました。メンドリたちも本をのぞき込みましたが、やっぱり読めません。「あら、おいしそうな虫かしら?」一羽のメンドリがくちばしでツンツンしました。「こっちにはミミズがいるかも!」別のメンドリは足でカリカリ引っ掻きました。
本は少しだけ汚れて、ページもちょっと曲がってしまいました。でもコケコさんは気にしません。「この本は、ぼくが一番高いところからみんなに朝を知らせるのにちょうどいいや!」
コケコさんはその「あいうえお」の本の上に乗り、胸を張って一番大きな声で鳴きました。「コケコッコー!」
まるで、本に書いてあることを全部わかっているみたいに、とっても立派に見えましたとさ。
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