子供たちのおしゃべり
アンデルセン童話
あるところに、それはそれは立派なお屋敷がありました。その日、お屋敷では子どもたちのための楽しいパーティーが開かれていました。お部屋には、きれいな服を着た子どもたちがたくさん集まっています。
その中でも、一番いばりんぼうなのは、このお屋敷の娘さんでした。「わたしのうちはすごいのよ!」と、胸を張って言いました。「うちのお父さんはね、とっても偉いの。新聞にだって、誰の名前でも載せられるんだから!」
ほかの子どもたちも、「へえ、すごいねえ!」と言いながら、自分のお父さんやお母さんの自慢を始めました。「うちのお父さんはお医者さん!」「うちのお母さんはピアノの先生!」みんな、自分の家族が一番だと思っています。
でも、隅っこに、ひとり静かにしている女の子がいました。その子は、お母さんが洗濯屋さんをしている、少し貧しい家の女の子でした。お屋敷の娘さんは、その子を見て言いました。「あなたのおうちは、何をしているの? きっと、たいしたことないんでしょう?」
静かだった女の子は、顔を上げて、はっきりと言いました。「わたしのうちは、貧しいかもしれません。お母さんは洗濯屋さんです。でもね…」
女の子は続けました。「わたしのお父さんは、騎士なんです。王様から、立派な勲章をもらった、勇敢な騎士なんですよ。」
それを聞いたとたん、いばりんぼうだったお屋敷の娘さんも、ほかの子どもたちも、みんなびっくりして、口をぽかんと開けてしまいました。騎士だなんて、新聞に名前が載るより、ずっとずっとかっこいいと思ったのです。
それからというもの、お屋敷の娘さんは、あまりいばらなくなりました。だって、本当にすごいのは、お金持ちなことだけじゃないって、ちょっぴりわかったのかもしれませんね。
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