• 古い街灯

    アンデルセン童話
    町のはずれに、一本の古い街灯が立っていました。もうずいぶん長いこと、そこに立って、夜になるとあたたかい光で道を照らしてきました。恋人たちがこっそり会うのも、お母さんが子どもを迎えに来るのも、夜回りのおじさんが「火の用心!」と声をかけるのも、ぜーんぶ見てきました。

    でも、ある日、街灯は聞きました。「あの古い街灯も、もうすぐ取り替えだねえ」って。街灯は、しょんぼりしました。「もう、みんなの役に立てなくなるのかなあ。溶かされて、ただの鉄くずになっちゃうのかなあ」と、とても悲しくなりました。

    その夜、びゅーんと風が吹いてきて、言いました。「心配いらないよ、街灯さん。君が見てきた素敵なこと、楽しいこと、全部覚えていられるようにしてあげる。そうすれば、いつでも思い出して、心がぽかぽかするだろう?」街灯は「ありがとう、風さん!」と言いました。

    次に、お月様の光が、そっと降りてきて言いました。「私もプレゼントをあげるわ。火が灯っていなくても、君が内側からキラキラ輝けるようにしてあげる。そうすれば、君はいつだって美しいままだよ。」街灯は「まあ、なんて素敵!ありがとう、お月様!」と喜びました。

    そのとき、キラリーン!流れ星がひとつ、空を横切りました。「僕からは、君が一番幸せになれる場所へ行ける魔法をあげよう!君が本当に大切にされるところへね!」街灯は、みんなの優しさに胸がいっぱいになりました。「みんな、本当にありがとう!」

    とうとう、街灯が取り外される日がやってきました。ちょっぴり寂しかったけど、なんだかワクワクもしていました。そして、街灯はどこへ行ったと思いますか?

    なんと、昔からの知り合いの、あの夜回りのおじいさんの家に運ばれたのです!おじいさんとおばあさんは、古い街灯をピカピカに磨いて、お部屋の一番いい場所に飾ってくれました。そして、お祝いの日や、お客さんが来た日には、ちゃんと火を灯してくれたのです。

    街灯は、もう一度みんなを照らせて、とっても嬉しくなりました。風さんがくれた記憶で楽しい昔を思い出し、お月様の光で優しく輝き、流れ星さんがくれた魔法で、新しい場所で幸せになったのです。

    おじいさんの家で、街灯はいつまでもいつまでも、みんなに愛されながら、静かに輝き続けましたとさ。

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