• 北欧神話 九つの世界

    北欧神話
    空っぽの大きな大きな空間が、どーん!と広がっていた頃のお話だよ。まだ太陽も月も、星も何もなかったんだ。その空間の片っぽには、メラメラと燃える火の国「ムスペルヘイム」があって、もう片っぽには、カチコチに凍った氷の国「ニヴルヘイム」があった。

    ある時、火の国の熱い空気と、氷の国の冷たい空気が、空間の真ん中で出会ったんだ。すると、シューッという音とともに、氷が少しずつ溶けて、そこから最初の巨人「ユミル」がもくもくと生まれた。ユミルはとっても大きくて、お腹が空くと、一緒に生まれた大きな牛「アウドムラ」のお乳を飲んだんだ。

    アウドムラは、しょっぱい氷をペロペロなめるのが大好き。三日三晩なめ続けていたら、なんと氷の中から最初の神様「ブーリ」が現れた!ブーリには「ボル」という息子がいて、ボルには三人の息子が生まれた。それが、みんなも知っているかもしれない「オーディン」、そして「ヴィリ」と「ヴェー」という兄弟さ。

    オーディンたちは、ユミルがあまりにも大きくて、ちょっと乱暴なのが気になっていた。「このままじゃいけない、新しい世界を作ろう!」と三人は力を合わせて、ユミルをえいっ!とやっつけたんだ。

    そして、ユミルの体から、私たちの住む世界「ミズガルズ」を作り始めた。ユミルのお肉は大地に、血は海や川に、骨は山々に、そして髪の毛は森の木々になった。頭の骨は大きな空になって、脳みそはふわふわの雲になったんだ。まつげは、ミズガルズの周りを囲む丈夫な柵になった。これで人間たちが安心して暮らせるね。

    オーディンたちは、浜辺に流れ着いた二本の流木を見つけた。一本はトネリコの木、もう一本はニレの木。オーディンが息を吹きかけると、木は最初の人間、男の「アスク」と女の「エンブラ」になったんだ。

    こうして世界ができたんだけど、実は世界は一つじゃない。全部で九つもあるんだ!これらの世界は、宇宙の真ん中にどっしりと生えている大きな大きなトネリコの木「ユグドラシル」の枝や根っこで繋がっている。

    一番上には、オーディンたち神様が住む「アスガルド」。ここへは、キラキラ輝く虹の橋「ビフレスト」を渡っていくんだ。
    その下には、私たちの「ミズガルズ」。
    ミズガルズの周りには、巨人たちが住む「ヨトゥンヘイム」がある。
    明るくて美しいエルフたちが住むのは「アールヴヘイム」。
    逆に、暗いところに住んでいて、物作りがとっても上手なドワーフ(闇のエルフとも呼ばれるよ)たちの国は「スヴァルトアールヴヘイム」。
    アスガルドの神様たちとは別の、もう一つの神様の一族、ヴァン神族が住む「ヴァナヘイム」もある。
    そして、一番下の方には、最初にあった氷の国「ニヴルヘイム」と、ちょっぴり怖い、死んだ人たちの行く国「ヘルヘイム」。
    もちろん、最初にあった火の国「ムスペルヘイム」も、ちゃんとあるよ。

    こうして、九つの世界がユグドラシルの木に守られて、それぞれの場所で物語を紡いでいるんだ。面白いだろう?

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