黄帝の蚩尤討伐
中国神話
むかしむかし、まだ神様や不思議な生き物たちが地上をのんびり歩いていたころのお話です。
そのころ、黄帝(こうてい)さまという、とても賢くてみんなに好かれる優しいリーダーがいました。黄帝さまは、人々に火の使い方や家の作り方、文字などを教えて、みんなが仲良く暮らせるようにしていました。
でもね、同じころ、蚩尤(しゆう)という、ものすごく力が強くて、ちょっと乱暴なリーダーもいたんです。蚩尤は体が銅のように硬く、頭には角が生えていて、手下もたくさんいました。蚩尤は自分の力が強いのをいいことに、あちこちで騒ぎを起こし、他の村の人たちを困らせていました。「わっはっは!俺様が一番だ!」といつも威張っていたのです。
黄帝さまは心を痛めました。「これではいけない。みんなが安心して暮らせるように、蚩尤のわがままを止めなくては。」
そして、黄帝さまは勇気を出して、蚩尤と戦うことを決心しました。
さあ、黄帝さまと蚩尤の大きな戦いが始まります。
蚩尤は得意の妖術で、もわもわ~っと濃い霧を発生させました。あたりは真っ白!「うわあ、前が見えないよ!」「どっちへ進めばいいんだ?」黄帝さまの兵隊たちは、すっかり道に迷ってしまいました。
でも、黄帝さまには風后(ふうこう)という、とっても頭のいい仲間がいました。風后は「よし、見ていてください!」と、ある特別な車を作りました。その車の上には人形が乗っていて、その人形はどんな時でも、必ず南の方角を指さすのです。これが「指南車(しなんしゃ)」と呼ばれるものです。
「すごい!これなら霧の中でも迷わないぞ!」黄帝さまの兵隊たちは大喜び。指南車のおかげで、霧の中から抜け出すことができました。
蚩尤は「むむむ、霧がダメだったか。ならばこれだ!」と、今度は空に向かって叫びました。すると、空が真っ暗になり、ゴロゴロドシャーン!ものすごい嵐を呼び寄せたのです。大雨と強い風で、黄帝さまの軍はびしょ濡れになり、寒くて震え上がりました。
黄帝さまは困りましたが、諦めません。天に住む、日照りの力を持つ娘の神様、女魃(じょかつ)にお願いしました。「女魃どの、どうかこのひどい雨を止めてください!」
女魃が地上に降りてくると、不思議なことに、あれほど激しかった雨がピタリと止み、嵐もどこかへ去って、太陽が顔を出しました。
さらに、黄帝さまの頼もしい友達である、翼を持つ龍の応龍(おうりゅう)も助けに駆けつけました。応龍は大きな口から水を吹き出して、蚩尤の軍に立ち向かいます。
とうとう、最後の決戦の時がやってきました。
黄帝さまの軍は、指南車で正しい道を進み、女魃や応龍の助けもあって、勇気いっぱい戦いました。一方、蚩尤の軍は霧や嵐の術が破られ、だんだん元気がなくなっていきます。
そしてついに、黄帝さまが蚩尤を打ち破りました!
乱暴者の蚩尤がいなくなり、土地には平和が戻りました。みんな大喜びで黄帝さまを迎えました。
黄帝さまはその後も、みんながもっと賢く、もっと仲良く暮らせるように、色々なことを教え、中国の最初の文明を築いたと言われています。
めでたし、めでたし。
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