• ナタの東海龍王退治

    中国神話
    むかしむかし、中国に李靖(りせい)という名前の将軍がいました。李将軍の奥さんのお腹には、もう三年も赤ちゃんがいました。みんな「いつ生まれるのかなあ」と首を長くして待っていました。

    ある日、とうとう赤ちゃんが生まれる時がやってきました!でも、びっくり。生まれてきたのは、まん丸の大きな肉の塊だったのです。李将軍は驚いて、剣でそーっとその肉の塊を切ってみました。すると、パカッと割れて、中から元気いっぱいの男の子が飛び出してきました!この子が、ナタです。

    ナタは生まれてすぐに、太乙真人(たいいつしんじん)という仙人から、不思議な宝物をもらいました。「乾坤圏(けんこんけん)」という金の輪っかと、「混天綾(こんてんりょう)」という赤い布です。乾坤圏は投げるとビューンと飛んでいき、混天綾は水の中でも自由に動ける魔法の布でした。

    ある暑い夏の日、ナタは海へ遊びに行きました。あまりにも暑いので、混天綾を海につけてパシャパシャと水遊びを始めました。ナタが混天綾を振ると、布はまるで生きているみたいに海の中をかき回し、大きな波が立ちました。

    実は、その海の底には竜王様の立派な宮殿がありました。ナタが起こした大波で、竜宮城はグラグラと揺れて大騒ぎ!「何事だ!」と怒った竜王様は、三番目の息子の敖丙(ごうへい)王子に見に行かせました。

    敖丙王子は海の上に出てきて、ナタを見つけると「こら!誰だ、海を荒らしているのは!」と怒鳴りました。
    ナタは「暑いから水浴びしてるだけだよー」と平気な顔。
    これに敖丙王子はもっと怒って、ナタに襲いかかってきました。ナタも負けていません。乾坤圏をヒョイと投げると、それが運悪く敖丙王子の頭にゴツン!敖丙王子は倒れてしまいました。

    これを知った竜王様は、火のように怒りました。「息子を返せ!さもなくば、この町を大水で沈めてやる!」と、ナタの住む町に押し寄せてきました。
    町の人たちは大慌て。ナタは、自分のせいでみんなが困っているのを見て、とても悲しくなりました。

    そして、ナタは決心しました。「僕のせいです。お父さん、お母さん、ごめんなさい。」
    ナタは、みんなを助けるために、自分の体をお父さんとお母さんに返して、竜王様に謝ろうとしたのです。

    でも、ナタの師匠である太乙真人は、そんなナタを放ってはおきませんでした。仙人は、蓮の花びらや茎を使って、ナタに新しい体を作ってあげました。新しい体を手に入れたナタは、前よりももっと強くて、かっこいい姿になりました。

    それからというもの、ナタはその強い力で悪い妖怪を退治したり、困っている人々を助けたりして、みんなから愛される英雄になったということです。おしまい。

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