• 薪を抱いて火を救う

    中国寓話
    むかし、ある村で、たいへんなことがおこりました。なんと、家が火事になっちゃったんです!
    火はメラメラと燃え上がり、黒い煙がもくもくと空にのぼっていきました。

    そこへ、ひとりの親切だけど、ちょっぴり慌てん坊のおじさんが通りかかりました。
    「大変だ!火を消さなくちゃ!」おじさんは思いました。
    どうやって火を消そうかと考えたおじさん、ひらめきました!
    「そうだ!火には薪がいいって聞いたぞ!薪をたくさん持っていけば、火もびっくりして消えるかもしれない!」
    おじさんは、そう信じて、急いで薪をたくさん抱えて、火の中に投げ込みました。「これでよし!」

    ところが、どうでしょう!火は消えるどころか、もっと大きく、もっと元気に燃え始めたのです!
    「あれれ?おかしいなあ。薪が足りないのかな?」
    おじさんは、もっともっとたくさんの薪を運び、一生懸命、火の中に投げ入れました。

    火はますます勢いを増して、ゴーゴーと音を立てて燃えさかり、家はあっという間に焼け落ちそうになりました。
    そのとき、他の村人たちが駆けつけてきました。彼らは水桶を持って、一生懸命火に水をかけています。
    ひとりがおじさんを見てびっくり。
    「あなた、何をしているんですか!薪をくべたら、火はもっと燃えるでしょう!」

    おじさんはキョトンとしました。
    「え?そうなの?火を消すのを手伝おうと思ったんだけど…」
    村人たちはため息をつきました。
    「火を消すときは、水を使うんですよ。薪は火を大きくするだけです。」

    おじさんは、良かれと思ってしたことでも、やり方を間違えると大変なことになるんだなあと、しょんぼり反省しました。
    そして、みんなで力を合わせて、やっと火を消すことができたのでした。

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