人間万事塞翁が馬
中国寓話
国の境の近くの村に、サイさんというおじいさんが住んでいました。サイさんには、たいせつな馬が一頭いました。
ある日、その馬が、ひゅーっとどこかへ逃げてしまいました。村の人たちは「たいへんですね、お気の毒に」とサイさんを慰めに来ました。でも、サイさんは言いました。「うーん、これが良いことなのかもしれないよ。」みんなは「え?」とびっくりしました。
数日後、もっとびっくりすることが起きました。逃げた馬が、なんと、もう一頭、ぴかぴかの立派な馬を連れて帰ってきたのです。村の人たちは「すごい!よかったですね!」とお祝いに来ました。でも、サイさんはまた言いました。「うーん、これが悪いことなのかもしれないなあ。」みんなはまた「ええー?」と首をかしげました。
サイさんには息子がいました。息子は新しく来た馬が大好きで、毎日乗って遊んでいました。ところがある日、その馬から落ちて、足をポキッと折ってしまったのです。村の人たちは「かわいそうに。あんなに元気だったのに」とまた慰めに来ました。でも、サイさんはやっぱり言いました。「うーん、これが良いことなのかもしれないよ。」
しばらくすると、国で大きな戦争が始まりました。村の若い男の人たちは、みんな兵隊さんとして戦争に行かなければならなくなりました。そして、その多くが帰ってきませんでした。でも、サイさんの息子は足を怪我していたので、戦争に行かなくてもよかったのです。
その時、村の人たちはやっとサイさんの言葉の意味がわかりました。良いことが悪いことになるかもしれないし、悪いことが良いことになるかもしれない。何が本当にラッキーで、何がアンラッキーかなんて、すぐにはわからないものなんだね。
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