虎の威を借る狐
中国寓話
緑がまぶしい、ある日の森の中でのことです。
お腹をぺこぺこにすかせた大きなトラが、一匹の小さなキツネを見つけました。「しめた!今日のごはんだ!」トラはキツネに飛びかかり、がぶっと食べようとしました。
キツネはびっくりしましたが、すぐにいいことを思いつきました。「待った、待った!トラさん、僕を食べちゃだめだよ!」と、慌てて言いました。
トラは、「どうしてだい?お前はうまそうだぞ」と不思議そうに聞きました。
キツネは胸を張って言いました。「実はね、僕は天の神様から森の王様に選ばれたんだ。僕を食べたら、神様の罰が当たるよ!」
トラはキツネの言葉を聞いて、少し考え込みました。「ほんとうかい?お前みたいな小さいやつが?」
「うそじゃないよ。信じられないなら、僕の後ろを歩いてごらん。森の動物たちが僕を見て逃げ出すから。」とキツネは言いました。
トラは、「ふむ、それは面白い。よし、試してみよう」と、キツネの提案にのりました。
キツネはいばって前を歩き始めました。大きなトラは、その後ろを静かについていきます。
森の動物たち、ウサギさんやリスさん、シカさんたちが、キツネを見ました。そして、その後ろにいる大きなトラを見て、びっくり仰天!
「わー!トラだー!逃げろー!」動物たちは大慌てで逃げていきました。
トラは、動物たちがキツネを見て逃げているのだと、すっかり信じ込んでしまいました。
「本当だったんだな。キツネは本当に森の王様なんだ」とトラは感心しました。そして、キツネを食べるのをやめて、すごすごと森の奥へ帰っていきました。
キツネはしめしめ、トラをうまく騙せたぞ、と大喜び。ぴょんぴょん跳ねながら、自分の巣穴へ帰っていきましたとさ。
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