蟹と蛇
イソップ寓話
海辺の砂浜に、カニさんとヘビさんが住んでいました。
カニさんは、いつもまっすぐな心を持っていて、正直者でした。でも、歩くのはちょっぴり苦手で、いつも横にちょこちょこ。
一方、ヘビさんは、体はくねくね、心もなんだか曲がっているみたいでした。
カニさんはヘビさんに言いました。「ヘビさん、もっと素直になったら、きっともっと素敵だよ。僕たち、仲良くしようよ。」
ヘビさんは「うん、そうだね」とニョロリと笑いましたが、心の中では「カニさん、お人よしだなあ」と思っていました。
それからも、ヘビさんはやっぱりずる賢いことばかり。カニさんが親切にしても、ヘビさんは約束を破ったり、嘘をついたりしました。カニさんは、だんだん我慢できなくなりました。「もう、ヘビさんの曲がった心はまっすぐにできないのかな…。」
ある日、ヘビさんが気持ちよさそうにお昼寝をしているのを見つけました。体はいつものように、くねーっと曲がっています。
カニさんは、そーっと近づいて、大きなハサミでヘビさんの体をぎゅーっと挟みました。
「うわっ!痛い!何するんだい!」ヘビさんはびっくりして飛び起きました。
カニさんは言いました。「ヘビさん、君はいつも心が曲がっていたね。でも見てごらん。僕に挟まれて、今だけは体がまっすぐになっているよ。本当は、生きているうちに心をまっすぐにしてほしかったんだ。」
ヘビさんは、カニさんのハサミでまっすぐにされたまま、何も言えませんでした。曲がったことをしていると、いつかこんなふうに困ったことになるんだな、とヘビさんは思ったかもしれませんね。
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