• 農夫と子供たちと薪の束

    イソップ寓話
    むかしむかし、というほど昔でもないけれど、あるところに、元気いっぱいの息子たちがいるお百姓さんが住んでいました。ただ、この息子たち、いつもささいなことで言い争ってばかり。お百姓さんは年を取ってきて、息子たちの将来がとても心配でした。

    「わしがいなくなったら、あの子たちはどうなるんじゃろうか…」

    ある日、お百姓さんは息子たちを呼び集めました。そして、細い木の枝をたくさん束ねたものを持ってきました。

    「さあ、お前たち。この枝の束を、だれか折ってみなさい。」

    まず、一番力持ちの長男が挑戦しました。うーん、うーんと力を込めますが、枝の束はびくともしません。
    「だめだ、父さん。こりゃあ、折れないよ。」

    次に、次男がやってみました。やっぱり、うんともすんとも言いません。三男も、四男も、みんな挑戦しましたが、誰も枝の束を折ることはできませんでした。

    「ふむ」とお百姓さんはうなずくと、枝の束をほどき、一本一本の枝を息子たちに渡しました。
    「では、今度はこの一本ずつの枝を折ってみなさい。」

    息子たちは、それぞれ渡された枝を手に取りました。するとどうでしょう。パキッ!パキッ!と、いとも簡単に折れてしまいました。

    息子たちは顔を見合わせました。

    お百姓さんは、にっこり笑って言いました。
    「分かったかな?一本一本では簡単に折れてしまう枝も、こうして束になれば、だれにも折れないほど強くなる。お前たちも同じじゃ。一人ひとりでは弱いかもしれんが、みんなで力を合わせれば、どんな困難にも立ち向かえる強い力が生まれるんじゃよ。」

    息子たちは、お父さんの言葉の意味がよく分かりました。それからは、お互いに助け合い、仲良く暮らしたということです。

    1947 閲覧数