キツネとぶどう園の作業員
イソップ寓話
ある暑い日のことでした。一匹のキツネが、お腹をすかせて、のどをカラカラにしながら歩いていました。
「ああ、何かおいしいものはないかなあ。水も飲みたいなあ。」
ちょうどその時、目の前に立派なぶどう畑が見えました。ぶどう畑では、農家の人がせっせと働いていました。キツネはそっと畑に近づき、高い棚に、それはそれはおいしそうな、紫色に熟れたぶどうがたわわに実っているのを見つけました。太陽の光を浴びて、キラキラと輝いています。
「うわあ、なんてうまそうなぶどうだ!あれを食べて、のどをうるおしたいなあ」
キツネは、ぴょーん、ぴょーんと何度もジャンプしました。でも、ぶどうは高すぎて、どうしても届きません。
「うーん、もうちょっと!」
今度は背伸びをしたり、少し後ろに下がって助走をつけて跳んでみたりしましたが、やっぱりダメです。ぶどうの甘い香りが鼻をくすぐりますが、キツネの口には入りません。
キツネはだんだん疲れて、息も切れてきました。額からは汗がポタポタ。
しばらくぶどうを悔しそうに見上げていましたが、とうとう諦めてこう言いました。
「ふん!どうせあのぶどうは、すっぱくてまずいに決まってるや。あんなもの、誰が食べるもんか!ちっともおいしそうじゃないやい。」
そして、キツネは「ちっとも欲しくなんかないやい」という顔をして、ぷいっと向こうへ行ってしまいました。本当はとっても食べたかったのにね。
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