ゼウスと蜜蜂
イソップ寓話
空の上、神様たちが住んでいるオリンポス山でのことです。
一匹の賢いミツバチが、それはそれは素晴らしい蜂蜜を作りました。黄金色に輝いて、甘くてとろーり。ミツバチは「この最高の蜂蜜を、偉大なゼウス様に差し上げよう!」と思いました。
ブーンブーンと羽を鳴らして、ミツバチはオリンポス山へ。
ゼウス様は、ミツバチが持ってきた蜂蜜を壺からちょっぴり指ですくって、ぺろり。
「おお、これはなんと美味しい蜂蜜じゃ!素晴らしい!褒美をあげよう。何が欲しいかな?」
ゼウス様はにっこりしました。
ミツバチは嬉しくなって言いました。
「ゼウス様、ありがとうございます!実は、お願いがあるのです。私が一生懸命作ったこの蜂蜜を、人間たちがよく盗みに来るのです。どうか、彼らを追い払うための、チクッと刺せる強い武器をくださいませんか?」
それを聞いたゼウス様の顔が、少し曇りました。
「ほう、武器とな。それは誰かを傷つけるためのものか…うーむ。」
ゼウス様は少し考えた後、こう言いました。
「よかろう。お前に小さな針を授けよう。だが、よくお聞き。その針を一度でも誰かに使えば、お前自身もその場で命を失うことになるのだ。」
ミツバチはびっくり!そして、ちょっぴり悲しくなりました。
自分の大切なものを守りたいだけだったけれど、誰かを傷つけることを願ったせいで、自分も危険な目に遭うことになったのですから。
それからというもの、ミツバチは本当に必要な時以外は、決して針を使わないようになったそうですよ。人を困らせようとすると、結局は自分にも良くないことが返ってくる、ということかもしれませんね。
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