• ロバと買い手

    イソップ寓話
    ある日、村の広場で、ロバを売っている人がいました。そこへ、荷物を運ぶロバを探しているおじさんがやってきました。

    おじさんは、一匹の元気そうなロバを見つけました。
    「このロバを試してみてもいいかね?」と、ロバを売る人に聞きました。
    「もちろんですとも。一日だけなら、どうぞ連れて行ってください」と、売る人はにこにこして答えました。

    おじさんはロバを連れて、自分の家へ帰りました。
    家には、おじさんがすでに飼っているロバたちが、のんびりと草を食べていました。おじさんは新しいロバを、その仲間たちのいる牧場へ放しました。

    さて、新しいロバはどうするでしょう?
    新しいロバは、きょろきょろと周りを見回しました。そして、まっすぐに一匹のロバのところへ歩いて行きました。
    そのロバは、仲間の中でも一番のなまけものでした。そして、いつも一番おいしい草を独り占めする、食いしん坊だったのです。
    新しいロバは、そのなまけものロバの隣にぴったりとくっついて、一緒に草を食べ始めました。

    それを見ていたおじさんは、ため息をつきました。
    「ふむ、このロバも、あいつと同じような怠け者になるに違いない」
    おじさんはすぐに新しいロバに綱をつけ、市場へ連れて帰りました。

    「このロバは買いませんよ」とおじさんは言いました。
    「どうしてです?何か問題でも?」と売る人は驚きました。
    おじさんは答えました。「このロバは、私のところにいる一番のなまけもののロバを選びました。きっと、このロバも同じように怠けるでしょうからね。友達を見れば、そのロバがどんなロバかわかるものです。」

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