狐と茨
イソップ寓話
森の奥深く、一匹の賢いけれど、ちょっぴりうっかり者のキツネがいました。
ある日、キツネは元気いっぱいに野原を駆け回っていました。ぴょんぴょん、ぴょんぴょん!楽しくて、つい夢中になっていたら、あら大変!足元の大きな穴に気づかず、ズルッ!と滑ってしまいました。
「わーっ、落ちるー!」
キツネはびっくり。なんとか助かろうと、とっさに近くにあったイバラの茂みにガシッとしがみつきました。
「ふう、助かった…イタタタタ!」
キツネはホッとしたのもつかの間、イバラの鋭いトゲが手足にチクチク刺さって、血が出てしまいました。
キツネはイバラに向かって、ちょっと怒ったように言いました。
「もう、イバラさん!助けてもらおうと思って掴まったのに、こんなにトゲで僕を傷つけるなんて、ひどいじゃないか!」
すると、イバラの茂みは静かに答えました。
「おや、キツネさん。それはちょっと勘違いだよ。私はね、誰かが私に触れたら、しっかり掴んでしまうのが習性なんだ。君こそ、トゲだらけの私に助けを求めようとしたのが、うっかりだったんじゃないかな?」
キツネはイバラの言葉を聞いて、しょんぼりしました。確かに、トゲのあるものに頼ろうとしたのは、自分の不注意だったかもしれません。
「そっか…そうだね。ごめんよ、イバラさん。」
キツネは少し痛む手足で、今度はもっと周りをよく見ながら、ゆっくりと穴から這い上がったのでした。
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