庭師と犬
イソップ寓話
花や野菜を育てるのがとっても上手な、庭師のおじさんがいました。おじさんには、いつもそばにいる犬のポチがいました。ポチは、おじさんの庭が大好きでした。
ある晴れた日の午後、ポチは庭の隅っこにある古い井戸のそばで、気持ちよさそうにうとうと居眠りを始めました。お日様がぽかぽかして、つい眠ってしまったのです。
しばらくして、庭師のおじさんが、野菜に水をやろうとバケツを持って井戸に近づいてきました。「よいしょ、よいしょ」と独り言を言いながら歩いていたおじさんは、足元をよく見ていませんでした。そして…あらら!井戸のそばで眠っているポチにも気づかず、おじさんはうっかり足を滑らせて、どっぼーんと井戸の中に落ちてしまいました。
幸い、井戸の水は浅かったので、おじさんはびしょ濡れになっただけですみました。「うわあ、びっくりした!」おじさんは井戸の中から顔を出して、大きな音で目を覚ましたポチを見ました。ポチは、何が起こったのかわからず、きょとんとしています。
おじさんは、ちょっとむっとしてポチに言いました。「こら、ポチ!お前がちゃんと番をしないで居眠りしているから、こんなことになったじゃないか!もっとしっかり見張っていてくれないと困るよ!」
ポチはびっくりして、しょんぼりしてしまいました。おじさんが井戸に落ちたのは、本当にポチのせいだったのでしょうか?それとも、井戸に近づくとき、一番気をつけなければいけなかったのは、おじさん自身だったのかもしれませんね。
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