笛を吹く漁師
イソップ寓話
青い海が太陽の光を浴びて、キラキラと輝いている、そんな気持ちのいい朝のことです。
笛を吹くのがとっても上手な漁師さんが、いつものように魚を捕りにやってきました。
「よし、今日は僕の素敵な笛の音で、魚たちをうっとりさせて、自分から網に入ってもらおう!」
漁師さんはそう考えると、岩の上にちょこんと座り、自慢の笛を取り出しました。
「ピーヒャララ、ピロロリーン♪」
それはそれは美しいメロディーが、静かな海に響き渡ります。漁師さんは得意顔です。
「さあ、魚たちよ、この音楽に合わせて踊りながら出ておいで!」
しかし、いくら待っても、海の中はシーンとしたまま。魚たちは一匹も姿を見せません。
「あれれ?おかしいなあ。こんなに素敵な音楽なのに。」
漁師さんは首をかしげましたが、何度か笛を吹いても結果は同じでした。
「うーん、仕方ない。やっぱりいつものやり方でいくか。」
漁師さんはため息をつくと、笛を置き、代わりに大きな網を手に取りました。
そして、「えいっ!」と力いっぱい海に網を投げ入れました。
しばらくして網を引き上げてみると、どうでしょう!
網の中では、たくさんの魚たちがピチピチと元気に跳ねているではありませんか!
それを見た漁師さんは、網の中の魚たちに向かって言いました。
「やれやれ、君たち。さっき僕が笛を吹いた時には、静かにしていてちっとも踊らなかったくせに、今になって網の中でそんなに楽しそうに踊っているじゃないか。」
魚たちは何も言いませんでしたが、漁師さんはちょっぴりおかしくて、そして大切なことに気づいたのでした。やっぱり、それぞれのことに合ったやり方があるんだなあ、と。
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