• 臆病な旅人

    イソップ寓話
    森の小道を、ひとりの旅人さんがトコトコ歩いていました。この旅人さん、実はちょっぴり臆病だったのです。

    テクテク歩いていると、おや?道のわきに、キラリと光るものを見つけました。
    「なんだろう?」
    近づいてみると、それは立派な斧でした。
    旅人さんは大喜び!
    「やったあ!素晴らしい斧を見つけたぞ!これは『僕』の斧だ!ラッキー!」
    斧を肩にかついで、鼻歌まじりに歩き出しました。

    ところが、しばらく行くと、森の奥から大きな影が!
    「待てー!その斧はわしのだ!返せ、泥棒!」
    なんと、斧の持ち主らしい、いかつい顔の木こりさんが、すごい剣幕で追いかけてきたのです。

    さあ、大変!旅人さんは真っ青になりました。
    ブルブル震えながら、思わず叫びました。
    「うわあ、どうしよう!『僕たち』、捕まっちゃうよ!大変だ、大変だ!」

    すると、どこからか声がしました。(もしかしたら、肩にかついだ斧が、心の中で話しかけたのかもしれませんね。)
    「ちょっと待ってよ。さっき、斧を見つけた時は『僕の斧だ!』って言ってたじゃないか。それなら、捕まるのも『君だけ』じゃないのかい?『僕たち』じゃなくてさ。」

    旅人さんは、ハッとしました。
    良いことだけ自分のものにして、困った時だけ「僕たち」なんて、ずるいですよね。
    旅人さんは顔を真っ赤にして、何も言えなくなってしまいましたとさ。

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