• ラバ

    イソップ寓話
    あるところに、一頭の元気いっぱいのラバがいました。
    毎日おいしい草をたくさん食べて、のんびり過ごしていたので、体はまるまると太り、毛並みもつやつやです。

    ラバはいつも得意顔でした。
    「ぼくのお父さんは、それはそれは立派な競走馬なんだ! だからぼくも、走るのが速いし、姿もかっこいいんだぞ!」
    ぴょんぴょんと軽やかに跳ねてみせながら、他の動物たちに自慢していました。
    お母さんがロバだってことは、すっかり忘れているようでした。

    ところがある日、そのラバは遠くまで急いで荷物を運ばなければならなくなりました。
    「よし、見てろよ! お父さん譲りのこの足で、あっという間に着いてやる!」
    ラバは勢いよく走り出しました。
    でも、しばらく走ると、だんだん息が切れて、足も重くなってきました。
    「あれ? おかしいな。お父さんみたいに速く走れないや… ああ、そうだった。ぼくのお母さんは、ゆっくりだけど力持ちのロバだったんだ。」
    ラバは急にしょんぼりして、トボトボと歩き始めました。
    お父さんのことばかり考えていたけれど、自分にはお母さんの血も流れているんだと、その時やっと気づいたのでした。

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