農夫と蛇
イソップ寓話
雪がしんしんと降る、とっても寒い冬の日のことです。
ひとりの優しいお百姓さんが、森の中を歩いていました。
「うー、寒い寒い。早く家に帰って温まろう。」
そのとき、お百姓さんは雪の上で動かなくなっている一匹のヘビを見つけました。
ヘビは寒さでカチコチに凍えそうになっています。
「おや、かわいそうに。このままでは死んでしまうだろう。」
お百姓さんは、ヘビをそっと拾い上げると、自分の暖かい懐(ふところ)に入れました。
「よしよし、これで少しは暖かくなるだろう。」
お百姓さんは急いで家に帰り、ヘビを暖炉のそばにそっと置きました。
しばらくすると、ヘビはだんだん体が温まってきて、ゆっくりと動き始めました。
「おお、元気になったかい? よかったよかった!」
お百姓さんはヘビが助かったのを見て、にっこりしました。
ところが、すっかり元気を取り戻したヘビは、お百姓さんの方をじろりと見ると、いきなり「カプッ!」とお百姓さんの手に噛みついたのです!
「いたい! な、なんてことをするんだ!助けてあげたのに!」
お百姓さんはびっくりして叫びました。
ヘビはシューッと舌を出しながら言いました。
「だって、ぼくはヘビだからね。それがぼくのやり方さ。」
そう言うと、ヘビはスルスルとどこかへ行ってしまいました。
お百姓さんは痛む手を見ながら、とても悲しい気持ちになりました。
「ああ、悪い心を持ったものにいくら親切にしても、その本性は変わらないんだなあ…。」
お百姓さんは、ため息をつきました。
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