農夫と息子たち
イソップ寓話
あるところに、元気なおじいさんと、ちょっぴりなまけものの息子たちがいました。おじいさんは広いぶどう畑を持っていましたが、息子たちは畑仕事を手伝おうとはしません。
ある日、おじいさんは重い病気にかかってしまいました。もう長くないと悟ったおじいさんは、息子たちを枕元に呼びました。
「息子たちや、よく聞きなさい。わしのあのぶどう畑にはな、実は大変な宝物が隠してあるんだ。わしが死んだら、それを掘り出して、みんなで仲良く分けなさい。」
そう言い残すと、おじいさんは静かに息を引き取りました。
息子たちは悲しみましたが、同時にお父さんの言っていた宝物のことが気になって仕方がありません。
「お父さんの宝物って、いったい何だろう?」「きっと金貨がたくさん詰まった箱だよ!」「いや、キラキラ光る宝石かもしれないぞ!」
息子たちは、くわやスコップを手に取り、ぶどう畑を掘り始めました。
「ここかな?」「いや、あっちの隅じゃないか?」
息子たちは畑の隅から隅まで、一生懸命掘り返しました。ぶどうの木の根を傷つけないように気をつけながら、土を深く、深く掘りました。でも、いくら掘っても金貨の箱も、宝石も見つかりません。
「おかしいなあ。お父さんは嘘を言ったのかなあ。」
息子たちは汗びっしょりになり、くたびれてしまいましたが、宝物は影も形も見えませんでした。
がっかりした息子たちでしたが、畑の土はすっかり柔らかく耕されていました。
「せっかくここまで掘ったんだ。今年もぶどうを植えてみるか。」
そうして、息子たちはいつものようにぶどうの苗を植えました。
すると、どうでしょう。その年の秋、ぶどう畑は見たこともないほどたくさんのぶどうが実ったのです。それは、息子たちが畑の土を隅々まで深く掘り返したおかげで、土がとても良くなっていたからでした。
息子たちはたくさんのぶどうを収穫し、それを売ってたくさんのお金を手に入れました。
その時、息子たちはやっと気づきました。
「そうか!お父さんが言っていた宝物っていうのは、このことだったんだ!」
一生懸命働くこと、そしてその結果得られる豊かな実りこそが、お父さんが残してくれた本当の宝物だったのです。
それからというもの、息子たちはまじめに畑仕事に励むようになったということです。
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