狼と鶴
イソップ寓話
お腹をすかせたオオカミが、森でごちそうを見つけて、それはもう大喜びでガツガツと食べ始めました。
「うまい、うまい!」
夢中で食べていると、おっと大変!大きな骨がのどにグサリと刺さってしまいました。
「うぐぐっ、痛い!痛いよー!」
オオカミは苦しくて、涙をぽろぽろ流しながら、森の仲間たちに助けを求めました。
「誰か、誰かこの骨を取ってくれー!取ってくれたら、とびっきりのお礼をするぞ!」
でも、オオカミはいつも乱暴なので、みんな怖がって近づこうとしません。
そこへ、首の長ーいツルさんが通りかかりました。
「オオカミさん、どうかなさいましたの?」
「ツルさん、助けてくれ!のどに骨が刺さって死にそうだ。取ってくれたら、何でも欲しいものをあげよう!」
ツルさんは少し考えましたが、「わかりましたわ。私なら、その長い首で骨を取ってあげられるかもしれません」と言いました。
オオカミは大きな口をあんぐりと開けます。ツルさんは、その鋭い歯が並ぶ口の中に、そーっと長い首を差し込みました。そして、くちばしで器用に骨をつまんで、スポンと引き抜いてあげました。
「ふう、取れましたわよ」
「ああ、助かった!ありがとう、ツルさん!」
オオカミはすっかり元気になりました。
ツルさんはにっこりして言いました。
「それはようございました。では、約束のお礼をいただけますかしら?」
すると、オオカミはニヤリと意地悪く笑って言いました。
「お礼だと?おいおい、ツルさん。あんたは、このオオカミ様の口の中に頭を入れて、無事に生きて出てこられたんだぞ。それ以上の素晴らしいお礼が、他にあるとでも言うのかい?」
ツルさんは、あっけにとられて、何も言えずに飛び去っていくしかありませんでした。
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