• 狐と仮面

    イソップ寓話
    キツネのコンちゃんは、いつも森の中を探検するのが大好きでした。
    「今日は何か面白いもの、見つかるかなあ?」
    コンちゃんは鼻をクンクンさせながら、木の根っこや草むらをのぞき込んで歩いていました。

    そのとき、道のわきにキラリと光るものを見つけました。
    「おや?あれは何だろう?」
    近づいてみると、それはそれは立派な、人間の顔の形をしたお面でした。金色に塗られていて、目はパッチリと大きく、口はにっこりと笑っているように見えます。まるで生きているみたいに、とても美しいお面です。

    コンちゃんは、そのお面を前足でちょいちょいと触ってみました。
    「わあ、なんて綺麗なんだろう!こんなに立派な顔は見たことがないぞ。」
    コンちゃんは感心して、お面をぐるりと一周したり、裏側をのぞき込んだりしました。

    でも、いくら見ても、お面はただのお面。
    中には何も入っていません。空っぽです。
    コンちゃんは、ふうっとため息をついて言いました。
    「こんなに見事な頭なのに、もったいないなあ。中には、物事を考えるための大切なものが、これっぽっちも入っていないんだね。」

    そう言うと、コンちゃんはまた新しい発見を探しに、森の奥へと駆けていきました。

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