• 獅子の皮を被った驢馬

    イソップ寓話
    あるところに、ちょっぴりいたずら好きで、みんなを驚かせるのが大好きなロバがいました。

    ある日、ロバが森の中を歩いていると、狩人が置いていったらしいライオンの皮を見つけました。「これは面白いぞ!」ロバはにんまり笑うと、そのライオンの皮をすっぽりとかぶってみました。頭からしっぽまですっかりライオンの姿です。

    ロバは、さっそく森の中をのっしのっしと歩き回りました。ウサギやリス、シカなどの小さな動物たちは、本物のライオンが来たと思って、びっくり仰天!「わー、ライオンだー!」「逃げろー!」と、大慌てで逃げていきました。それを見て、ロバは「しめしめ、うまくいったぞ!」と、ますます得意になりました。

    調子に乗ったロバは、もっと誰かを驚かそうと、村の近くまでやってきました。そこへ、賢いことで有名なキツネが通りかかりました。ロバは「よし、あのキツネもびっくりさせてやろう!」と思い、キツネに向かって、ライオンのように「ガオー!」と吠えようとしました。

    ところが、ロバが大きく口を開けて出した声は、いつもの「ヒヒーン!」という間の抜けた鳴き声でした。

    それを聞いたキツネは、最初は少し驚いたものの、すぐにクスクスと笑い出しました。「なんだ、君だったのかい、ロバくん。その立派な毛皮には驚いたけれど、その声を聞いたらすぐに分かっちゃったよ。ライオンの皮をかぶっても、君は君だね。」

    ライオンの皮をかぶったロバは、顔を真っ赤にして、とても恥ずかしくなりました。どんなに着飾っても、本当の自分は隠せないんだな、とロバはしょんぼり考えながら、とぼとぼと自分の小屋へ帰っていきました。

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