麦の穂
グリム童話
ねえ、知ってる?昔、トウモロコシは今と全然違ったんだって。
その頃、トウモロコシの穂は、それはそれは立派で、下から上まで、たーくさんの実がぎっしり詰まっていたんだ。まるで、金の棒みたいにキラキラ輝いていたそうだよ。人々は、少しの畑からでも、お腹いっぱいトウモロコシを食べることができたんだ。
ある晴れた日、神様が地上をのんびりお散歩していました。神様は、人々が幸せに暮らしているか、作物は豊かに実っているか、いつも見守っていたんだ。
すると、一人の女の人が、小さな子供を連れて畑のそばを通りかかりました。あらあら、子供がおしりを汚しちゃった!女の人は周りを見回して、ちょうどそこにあったフサフサのトウモロコシの穂を一本ポキッと折ると、それで子供のおしりを拭いちゃったんだ。その穂には、たくさんの実がついていたのにね。
それを見ていた神様は、とっても悲しくなって、そして怒りました。「なんと無礼な!私が人々のために与えた聖なる食べ物を、そんな風に使うとは!」神様は言いました。「もう、トウモロコシには実はなるまい!」
それを聞いた人々は、びっくり仰天!「神様、どうかお許しください!トウモロコシがなくなったら、私たちは生きていけません!」みんなで一生懸命お願いしました。おじいさんもおばあさんも、お父さんもお母さんも、子供たちも、みんなで泣いて謝ったんだ。
神様は、人々の涙を見て、少しだけ考えを変えました。「わかった。では、穂の先っぽだけに実がなるようにしよう。そうすれば、小鳥たちも食べ物に困らないだろうし、人間たちも、私の恵みを忘れないように、少しは食べられるだろう。」
だから今でも、トウモロコシの実は、穂の上のほうにだけついているんだって。神様の言った通りだね。おしまい。
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