農夫と悪魔
グリム童話
あるところに、ちょっぴり貧乏だけど、とっても頭のいい農夫さんがいました。毎日、畑を耕していましたが、なかなか暮らしは楽になりません。
ある日のこと、農夫さんが畑で汗を流していると、目の前にシュッと黒い影が現れました。なんと、それはツノと尻尾の生えた悪魔だったのです!
悪魔はニヤリと笑って言いました。「おい、農夫。お前の畑でとれるものを、半分こにしないか?そうすれば、お前も少しは楽になるだろう?」
農夫さんは少し考えて、にっこり笑って言いました。「いいですよ、悪魔さん。それなら、地面の上に出てくるものを悪魔さんにあげて、地面の下にできるものを私にくださいな。」
悪魔は「ふん、地面の上がいいに決まってるじゃないか。よし、その約束だ!」と喜びました。
さて、農夫さんは何を植えたと思いますか? 農夫さんは、畑いっぱいにカブの種をまきました。
秋になり、収穫の時がやってきました。カブは地面の下に丸々と太り、地面の上には青々とした葉っぱだけが茂っています。
悪魔はやってきて、葉っぱばかり見てカンカンです。「キーッ!なんだこれは!葉っぱばかりじゃないか!だまされた!」
農夫さんは大きなカブをたくさん掘り出して、にこにこ顔でした。
悪魔は悔しくてたまりません。「もう一回だ!今度は、地面の下にできるものをもらうぞ!地面の上はお前にやる!」
農夫さんはまたにっこり。「いいですよ、悪魔さん。そういう約束にしましょう。」
次の春、農夫さんは畑に小麦をまきました。
夏が過ぎ、収穫の時。小麦は太陽の光を浴びて、黄金色の穂をたくさん実らせました。地面の下には、もちろん根っこだけです。
悪魔がやってきて、地面を掘り返すと、出てくるのは細い根っこばかり。「まただまされた!キーッ、もうお前とは取引しないぞ!」
悪魔はプンプン怒って、煙のように消えてしまいました。
農夫さんは、たくさんの小麦を収穫して、おいしいパンを焼いて食べましたとさ。賢い農夫さんのおかげで、その年は豊作で、家族みんな幸せに暮らしました。
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