森のなかの小さな家
グリム童話
むかしむかし、あるところに、貧しいけれど心優しい木こりの家族がいました。木こりには三人の娘がいました。
ある日、お父さんは森へ仕事に行くとき、一番上のお姉さんに言いました。「お昼になったら、森へご飯を持ってきておくれ。道に迷わないように、キビの粒をまいておくからね。」
お昼になり、お姉さんはキビの粒をたどって森へ入りました。でも、あらら?キビの粒は、お腹をすかせた小鳥たちがみんなついばんじゃった後でした。お姉さんは道に迷ってしまい、どんどん森の奥へ。
夜になって、お姉さんは一軒の小さな小屋を見つけました。トントン、と戸をたたくと、中から白ひげのおじいさんが出てきました。小屋の中には、めんどりさんと、おんどりさんと、ブチ模様の牛さんもいました。
「道に迷ってしまいました。泊めていただけませんか?」
「いいとも。だが、わしらのために、美味しい夕食を作っておくれ。それから、動物たちにも、ちゃんとご飯をあげておくれ。最後に、わしらの寝床をきれいに整えておくれ。」
お姉さんは「はい」と言いましたが、おじいさんの分はちょっぴり、動物たちにはほんの少しだけご飯をあげて、自分はたっぷり食べました。寝床も、自分のところだけフカフカにして、ぐっすり眠ってしまいました。
朝になると、おじいさんはお姉さんを地下室へ続く隠し扉からポイッと入れてしまいました。
次の日、お父さんは二番目の娘に同じようにお願いし、今度はレンズ豆を道にまきました。でも、やっぱり小鳥たちがレンズ豆も食べてしまい、二番目の娘も道に迷ってあの小屋へ。
おじいさんに同じことを頼まれましたが、二番目の娘も自分勝手だったので、同じように地下室へポイッ。
三日目、お父さんは一番下の娘にお願いしました。今度はエンドウ豆を道にまきました。でも、やっぱり小鳥たちがエンドウ豆も食べてしまい、一番下の娘も道に迷って、あの小屋へたどり着きました。
おじいさんに同じことを頼まれると、一番下の娘はにっこり笑って言いました。
「はい、おじいさん。まずはおじいさんの分から、心を込めて作りますね。」
彼女は美味しいお料理をたくさん作って、まずおじいさんにたっぷりあげました。それから、めんどりさん、おんどりさん、牛さんにも、たーっぷりご飯をあげて、優しく体をなでてあげました。
「コッコちゃん、コケコッコー!ありがとう、優しいお嬢さん!」めんどりさんが言いました。
「ケッコー、ケッコー!お腹いっぱいだ!」おんどりさんも嬉しそうです。
「ブチコもモーモー!こんなに親切にされたのは初めて!」牛さんも喜びました。
最後に、娘はおじいさんのベッドも、動物たちの寝床も、自分の寝床も、全部きれいにフカフカに整えました。そして、疲れていたのですぐに眠ってしまいました。
次の朝、娘が目を覚ますと、びっくり!
あの小さな小屋は、キラキラ輝くお城に変わっていました。そして、白ひげのおじいさんは、若くて素敵な王子様になっていました。めんどりさん、おんどりさん、牛さんも、立派な家来たちに姿を変えていたのです。
王子様は言いました。「君の優しい心のおかげで、悪い魔法がとけたんだ。ありがとう。どうか、僕のお嫁さんになってくれませんか?」
一番下の娘は喜んで王子様と結婚し、いつまでも幸せに暮らしました。
さて、地下室に入れられた二人のわがままなお姉さんたちはどうなったでしょう?
彼女たちは、炭焼き小屋で働くことになり、そこでようやく、人に親切にすることの大切さを学んだということです。めでたし、めでたし。
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