親すずめと四羽の子すずめ
グリム童話
森の大きな木の上に、スズメのお父さんと、まだ小さな四羽のヒナたちが住んでいました。ヒナたちは、毎日お父さんが運んでくる虫をたくさん食べて、すくすく大きくなりました。羽もすっかり生えそろい、そろそろ巣立ちの時です。
ある晴れた日、お父さんスズメはヒナたちを連れて、初めて広い世界へ飛び立ちました。
「いいかい、みんな。外の世界は楽しいこともいっぱいあるけれど、危ないこともたくさんあるんだ。私の言うことをよーく聞くんだよ。」
お父さんスズメは、まずヒナたちを静かな森の茂みに連れて行きました。
「ここは比較的安全だ。でも、人間には気をつけるんだ。特に、キラキラ光る筒を持っている人間は、鳥を捕まえようとすることがあるからね。」
それから、馬車が通る道を見下ろせる枝に止まりました。
「あの道も危ないよ。大きな馬や車がすごい速さで走ってくるから、うっかりしているとぶつかってしまうかもしれない。」
さらに、空を指して言いました。
「あまり高く飛びすぎると、もっと大きな鳥、そう、鷹なんかに狙われてしまうからね。いつも周りをよく見て、私のそばを離れないように。」
一番目のヒナは、お父さんの話を半分くらいしか聞いていませんでした。「へえ、そうなんだ。でも、僕なら大丈夫だよ!」と、ぴょんぴょん跳ねながら、賑やかな道の方へ飛んでいってしまいました。道端には美味しそうなパンくずが落ちています。「やったあ!」と夢中で食べていると、大きな犬が「ワン!」と吠えながら走ってきました。一番目のヒナはびっくりして飛び上がりましたが、犬に追いかけられて、ほうほうの体で逃げ帰ってきました。
二番目のヒナは、空を高く飛ぶことに憧れていました。「お父さんは心配しすぎだよ。僕はもっと高く飛んで、遠くの景色を見てみたいな!」お父さんの「鷹に気をつけて」という言葉もすっかり忘れ、ぐんぐん空へ昇っていきました。気持ちよく風に乗っていると、突然、大きな影が自分を覆いました。見上げると、鋭い目つきの鷹が、まさに自分を捕まえようと急降下してくるところでした!二番目のヒナは必死で茂みの中に逃げ込み、なんとか助かりましたが、心臓はドキドキしっぱなしでした。
三番目のヒナは、お父さんの注意を少しは聞いていましたが、好奇心には勝てませんでした。「人間ってどんなものかな?ちょっとだけ見てみよう。」そう言って、人間の子供たちが遊んでいる庭の方へ飛んでいきました。子供たちは楽しそうにボールで遊んでいます。ヒナが木の枝に止まって見ていると、一人の男の子がヒナに気づきました。「あ、かわいいスズメだ!」男の子はそっと近づいてきて、ヒョイとヒナを捕まえてしまいました。三番目のヒナは鳥かごに入れられ、お父さんの元へ帰ることはできませんでした。
さて、四番目のヒナはどうしたでしょう?
四番目のヒナは、お父さんの言うことを一つ一つ、よーく聞いていました。危ない道には近づかず、空高くも飛びすぎず、いつもお父さんのすぐそばを飛んでいました。人間を見かけると、さっとお父さんと一緒に隠れました。
お父さんスズメは、そんな四番目のヒナを見て安心しました。
「よしよし、お前は賢い子だ。私の教えをしっかり守っているね。」
お父さんは、四番目のヒナに、安全な場所で美味しい虫を見つける方法や、甘い木の実がなっている場所を教えてあげました。四番目のヒナは、お父さんの教えを守り、毎日たくさんのご飯を食べて、どんどん賢く、たくましくなっていきました。
やがて冬が来て、また春が巡ってきました。四番目のヒナは立派な若鳥になり、お父さんのように、自分の家族を守れる強いスズメになることを夢見て、元気に空を飛び回っているのでした。
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