子羊と小魚
グリム童話
あるところに、とっても仲良しの兄さんと妹がいました。でも、意地悪なまま母がやってきて、二人に魔法をかけてしまったのです。お兄さんは可愛らしい子羊に、妹はきれいな小さな魚に変えられてしまいました。
子羊は野原で草をもしゃもしゃと食べ、小さな魚は家のそばの池ですいすいと泳ぎました。二人はとても悲しくて、よくお互いに話しかけていました。
「お兄ちゃん、寂しいよ」池から妹の魚が言いました。
「大丈夫だよ、妹。いつかきっと元に戻れるさ」子羊のお兄さんは優しく答えました。
ある日、まま母は子羊を料理してしまおうと考えました。そして、お客さんが来ることになったので、料理番を呼びました。
「この子羊を捕まえて、おいしいごちそうにおし!」まま母は言いました。
料理番は優しい人でした。彼が子羊を捕まえようと台所へ連れて行くと、池から小さな魚が顔を出して、悲しそうに歌いました。
「ああ、料理番さん、お願い。
私のお兄ちゃんの子羊を、
どうか殺さないでくださいな。」
子羊も悲しそうに鳴きました。
「メー、メー、妹の言うことを聞いておくれ。僕を食べないでおくれ。」
料理番はびっくり仰天!「なんてことだ、この子羊と魚は話しているぞ!これはただの子羊と魚じゃない。きっと何かわけがあるに違いない。」
料理番はまま母には内緒で、子羊と小さな魚を助けることにしました。彼はまま母に「子羊は逃げてしまいました」と嘘をつき、代わりに別のごちそうを作りました。
お客さんが帰った後、料理番はこっそり子羊と小さな魚を連れて、森の奥に住む賢いおばあさんのところへ行きました。おばあさんは二人を見るとすぐに、まま母の悪い魔法だと気づきました。
おばあさんは特別な言葉を優しく唱えました。すると、あら不思議!子羊はお兄さんの姿に、小さな魚は妹の姿に戻ったのです!
二人は大喜びで料理番にお礼を言いました。「ありがとう、料理番さん!」
意地悪なまま母は、自分の魔法が解けたことを知ると、怒ってぷいっとどこか遠くへ行ってしまい、もう二度と戻ってきませんでした。
お兄さんと妹は、それからずっと二人で仲良く、幸せに暮らしましたとさ。
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