• 悪魔とそのおばあさん

    グリム童話
    むかしむかし、大きな戦争が終わったばかりのころ。三人の兵隊さんが、もう戦うのはいやだー!と、こっそり逃げ出してしまいました。
    広い麦畑に隠れていると、突然、ドーン!と大きな竜が現れました。実はこれ、悪魔だったのです。

    竜は言いました。「わしのために七年間働け。その間、体を洗っても、髪や爪を切っても、鼻をかんでも、お祈りをしてもならん。もしやり遂げたら、大金持ちにしてやろう。だが、できなかったら、お前たちはわしのものだ。」

    二人の兵隊は「そんなの無理だ!」と怖くなって逃げましたが、一人の兵隊は「よし、やってやろう!」と残りました。
    七年間、兵隊は体を洗わず、髪も爪も伸び放題。まるで森のけもののようでしたが、我慢強く悪魔の仕事をこなしました。

    七年後、悪魔は満足そうに言いました。「よくやった。褒美にこの袋をやろう。中身はただのゴミだが、お前にとっては宝物になるだろう。それから、一つなぞなぞだ。今夜のわしの晩餐は何かわかるか?当てられたら、お前は自由だ。」
    兵隊は袋を受け取りましたが、中身は本当にただの土くれでした。

    困った兵隊は、悪魔のおばあさんの家を訪ねました。おばあさんは意外にも親切で、「かわいそうに。よし、助けてあげよう」と言って、兵隊を小さなアリに変身させ、自分の袖の中に隠しました。

    やがて悪魔が帰ってきました。「おばあさん、今日の晩飯は何だい?」
    おばあさんは知らんぷり。「さあねえ。でも、今日は地獄で特別な肉を焼いて、ロバのあばら骨をお皿にして食べるって聞いたけど?」
    悪魔は「しーっ!誰にも言うなよ!」と慌てました。

    アリの兵隊はそれをしっかり聞いていました。おばあさんは兵隊を元の姿に戻し、兵隊は悪魔のところへ行きました。
    「悪魔さん、あなたの晩餐は地獄で焼いた特別な肉、お皿はロバのあばら骨でしょう?」
    悪魔はびっくり仰天!「な、なぜ知っている!」悔しそうに、悪魔はもう一つ金の袋を兵隊に渡しました。

    兵隊が袋を開けると、最初の土くれも、今もらった袋の中身も、キラキラ輝く金貨に変わっていました!
    大金持ちになった兵隊は、まずお風呂に入り、髪と髭を整え、新しい服を着て、すっかり立派な紳士になりました。

    兵隊は王様のいるお城へ行きました。王様は、賢くてお金持ちになった兵隊を気に入り、美しいお姫様と結婚させました。
    兵隊とお姫様は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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