• 明るい太陽が暴いた真相

    グリム童話
    町のはずれに、一人の仕立て屋さんが住んでいました。仕事はとっても上手でしたが、なぜかいつもお金に困っていました。「ああ、もっとお金持ちになれたらなあ」と、ため息ばかりついていました。

    ある日、仕立て屋さんが森を歩いていると、立派な服を着た旅人に出会いました。旅人さんは、ずっしりと重そうな袋を持っていました。仕立て屋さんの心の中に、もくもくと悪い考えが浮かんできました。「あの袋の中身は、きっとお金に違いない…あれが手に入れば…」

    旅人さんはにこやかに言いました。「こんなに明るいお日様の下では、悪いことなんてできませんね。お日様は全部お見通しですから!」
    仕立て屋さんはドキッとしましたが、旅人さんと別れた後、とうとう悪いことをして、旅人さんのお金をこっそり取ってしまいました。そして、空を見上げて言いました。「ふん、太陽が見ていたって?太陽が誰かに話すわけないだろう!」

    家に帰ると、仕立て屋さんは奥さんにたくさんの金貨を見せて言いました。「これを見ろ!大金持ちだ!でも、このことは絶対に誰にも話しちゃいけないぞ。太陽でさえ、このことは知らないんだからな!」
    奥さんはびっくりしましたが、「はい、あなた」と約束しました。

    でも、奥さんは少しおしゃべりで、うっかり屋さんでした。
    数日後、奥さんが台所でコーヒーを淹れていると、窓から太陽の光がキラキラと差し込み、コーヒーカップを照らしました。その時、奥さんは夫が隠した金貨のことを思い出して、つい独り言を言ってしまいました。
    「ああ、お日様、お日様。うちの旦那が旅人さんからお金を取ったこと、きっと見ていたんでしょうねえ。でも、誰にも言っちゃだめって言われたから、お日様も黙っていてね。」

    ちょうどその時、家の前を物売りの男が通りかかりました。男は、窓から聞こえてきた奥さんの独り言を、はっきりと聞いてしまったのです。「おや?今の話はなんだろう?太陽が見ていたお金の話だって?」

    物売りの男は、すぐに町役場へ行って、聞いたことを役人に話しました。
    役人たちは仕立て屋さんを呼び出し、問いただしました。
    仕立て屋さんは、「私は何も知りません!そんなお金、見たこともありません!」と、顔を真っ赤にして嘘をつきました。

    しかし、次に奥さんが呼ばれると、正直者の奥さんは、役人に聞かれるままに、夫が金貨を持ってきたこと、そして自分が太陽に向かって話しかけたことを、ぽろぽろと話してしまいました。
    さらに、物売りの男も「奥さんが太陽に話しかけているのを聞きました」と証言しました。

    仕立て屋さんは、もう逃げられません。「太陽がしゃべるわけない」と馬鹿にしていましたが、奥さんのうっかりした独り言と、それを聞いた物売りの男のおかげで、まるで太陽が本当に見ていて、みんなに知らせたかのようでした。

    こうして、仕立て屋さんの悪い行いは、明るい太陽が照らし出すように、すっかり明らかになってしまいました。悪いことは、いつか必ず誰かに知られてしまうものなのですね。

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