二人の旅人
グリム童話
広い広い世界のどこかに、二人組の旅人がいました。一人は明るくて働き者の靴屋さん、もう一人はちょっとずる賢いところがある仕立て屋さんでした。
二人は一緒に旅をすることになり、「旅の途中で見つけた良いものは、何でも半分こにしようね」と約束をしました。
しばらく行くと、靴屋さんが道端でキラキラ光るものを見つけました。「わあ、見て!金のいっぱい入った袋だよ!」
仕立て屋さんはすぐに言いました。「やったね!約束通り、半分こだよ。」
靴屋さんは、「うーん、これを見つけたのは僕だけど…まあ、約束は約束だね」と、少し残念そうにしながらも、金貨を仕立て屋さんと分けました。
やがて大きな森に着くと、仕立て屋さんが言いました。「ねえ、ここからは別々の道を行ってみない?どっちが幸運か試そうよ。」
靴屋さんは少し心配でしたが、「わかった」と答え、二人は別々の道へ進みました。
靴屋さんは森の奥で道に迷ってしまいました。すると、大きなクマが苦しそうにうなっています。「どうしたの?」と靴屋さんが聞くと、クマは言いました。「わしはこの森の王じゃ。足に大きなとげが刺さって痛くてたまらんのじゃ。」
靴屋さんは優しくクマの足からとげを抜いてあげました。
クマの王様はとても喜び、「ありがとう、親切な旅人よ。お礼にこれをあげよう。それから、あの仕立て屋には気をつけるんじゃぞ。あまり良いやつではなさそうだ」と、帰り道を教えてくれ、小さな宝石をくれました。
教えられた道を歩いていくと、なんと、仕立て屋さんが木の枝にぶら下がって「助けてー!」と叫んでいるではありませんか。どうやら、悪い山賊たちに捕まって、身ぐるみ剥がされそうになっていたのです。
靴屋さんは仕立て屋さんを助け出してあげました。
「ありがとう、本当にありがとう!」と仕立て屋さんは言いましたが、心の中では(しめしめ、あいつの残りの金貨と、あの宝石も奪ってやろう)と考えていました。
森を抜けたところで、仕立て屋さんは「ちょっと疲れたから、ここで休もう」と言い、靴屋さんがうとうとし始めると、こっそり靴屋さんのカバンから残りの金貨と宝石を盗んで、一人で逃げてしまいました。
目が覚めた靴屋さんは、仕立て屋さんもお金もなくなっていることに気づき、がっかりしました。でも、クマの王様の言葉を思い出し、「まあ、仕方ない。正直に頑張ろう」と、近くの町へ向かいました。
町では、靴屋さんの作る靴が素晴らしいと評判になり、たくさんのお客さんが来て、靴屋さんは正直な働き者として、とても幸せに暮らしました。
一方、ずる賢い仕立て屋さんは、盗んだお金もあっという間に使い果たし、誰も信用してくれなくなり、一人ぼっちで寂しい毎日を送ることになったそうです。やっぱり、正直が一番ですね。
1586 閲覧数