賢い人びと
グリム童話
あるところに、働き者の農夫がいました。農夫は一人で仕事をするのが大変になってきたので、お手伝いをしてくれるお嫁さんが欲しいと思いました。
そこで、かしこいハンスという若者に言いました。「ハンスや、わしのお嫁さんになってくれる、賢い娘さんを探してきておくれ。」
ハンスは「はい、かしこまりました!」と元気よく返事をして、お嫁さん探しの旅に出かけました。
しばらく行くと、一人の娘さんが、小さなナイフで一生懸命、太い薪を割ろうとしていました。斧を使えばすぐに割れるのに、小さなナイフでちょびちょびと削っているのです。
「これは賢いやり方だ!」とハンスは思いましたが、もっと賢い人がいるかもしれないと、先へ進みました。
次に出会った娘さんは、真っ暗な部屋の中に、ざるを使って太陽の光をすくい入れようと頑張っていました。窓を開ければ明るくなるのに、ざるで光を運ぼうとしているのです。
「おお、これもなかなか賢いぞ!」ハンスは感心しましたが、もう少し探してみることにしました。
そして三番目に出会った娘さんは、もっとすごかったのです。家の屋根に生えた草を牛に食べさせるために、牛を屋根に引っ張り上げようと、うんうん唸っていました。牛は重たくて、ぜんぜん屋根に上がりません。
「この人こそ、一番賢いに違いない!」ハンスはそう確信して、この娘さんを農夫のところに連れて帰ることにしました。
農夫はハンスが連れてきた娘さんを見て尋ねました。「ハンス、この娘さんはどんな賢いことをしていたのかね?」
ハンスは得意そうに答えました。「はい!屋根の草を牛に食べさせるために、牛を屋根に引っ張り上げようとしていたんです!それはもう、一生懸命でした!」
それを聞いた農夫は、にっこり笑って言いました。「おお、それは実に賢い!ハンス、よくやった。この娘さんなら、きっとわしの良いお嫁さんになるだろう。」
こうして、農夫はその賢い(?)娘さんと結婚し、三人で仲良く(?)暮らしたということです。めでたし、めでたし…かな?
1399 閲覧数