• 蛙の王子さま

    グリム童話
    お日様がキラキラ輝く、とっても天気の良い日のことでした。ある国に、それはそれは美しいお姫様がいました。お姫様の一番のお気に入りは、ピカピカに光る金のまり。お姫様は、お城のそばにある大きな森の泉のほとりで、その金のまりを投げて遊ぶのが大好きでした。

    ある日、お姫様がいつものように金のまりを空にポーンと投げ上げると、あら大変!まりは手からすべって、泉の中にポチャンと落ちてしまいました。泉は深くて、まりはどんどん沈んでいきます。
    「わーん、私の金のまりが!」お姫様はしくしく泣き出しました。

    すると、泉の中から「ゲコゲコ、お姫様、どうしてそんなに悲しそうに泣いているのですか?」と声がしました。
    見ると、一匹の大きなカエルが水面から顔を出しています。
    「私の金のまりが泉に落ちてしまったの。もう見つからないわ。」
    「ふむ。もし私をあなたのお友達にしてくれて、一緒にお皿からご飯を食べさせてくれて、あなたのベッドで寝かせてくれるなら、その金のまりを取ってきてあげましょう。」とカエルは言いました。

    お姫様は(カエルとなんて、絶対に嫌だわ!)と思いましたが、金のまりを取り返したくて、「ええ、ええ、もちろんよ!早くまりを取ってきて!」と約束しました。
    カエルはザブンと水にもぐり、すぐに金のまりをくわえて戻ってきました。お姫様はまりを受け取ると、大喜びで「ありがとう!さようなら!」と言って、お城へ駆け出してしまいました。
    「待って、待ってよ、お姫様!約束を忘れないで!」カエルは後ろから呼びましたが、お姫様は聞こえないふりです。

    その日の夕食のこと。王様やお姫様がテーブルについていると、ドアを「トントン!」と叩く音がしました。
    「お姫様、お姫様、開けてくださいな。お約束のカエルですよ。」
    お姫様は真っ青になりました。王様が「どうしたのだ?」と尋ねると、お姫様は昼間の出来事を話しました。
    王様は言いました。「約束は約束だ。守らなければいけないよ。さあ、カエルさんを中に入れてあげなさい。」

    仕方なくお姫様がドアを開けると、カエルがぴょこんと入ってきました。
    カエルは言いました。「お姫様、私をあなたの隣に座らせて、あなたのお皿から一緒にご飯を食べさせてください。」
    お姫様は嫌でたまりませんでしたが、王様が見ているので、しぶしぶカエルを自分の隣の椅子に座らせました。カエルさんは美味しそうにパクパク食べましたが、お姫様はほとんど喉を通りません。

    食事が終わると、カエルは言いました。「ああ、眠たくなってきた。あなたの綺麗で柔らかいベッドで一緒に寝かせてください。」
    お姫様はついに泣き出してしまいました。「いやよ、いやよ!カエルと一緒のベッドなんて!」
    でも王様は、「一度した約束は守らなくてはならん。困っている時に助けてもらったのだろう?」と厳しい顔で言いました。

    お姫様は仕方なく、カエルを二本の指でそーっとつまんで自分の部屋へ運び、部屋の隅っこに置きました。
    でも、カエルはベッドのそばまでぴょんぴょん跳ねてきて、「私もベッドに入れてくれないと、王様に言いつけますよ」と言いました。
    お姫様はもう我慢できませんでした。「うるさいわね!」とカエルを掴むと、壁に向かってえいっ!と投げてしまったのです。

    ドスン!と音を立ててカエルが床に落ちると、どうでしょう!
    そこにいたのはカエルではなく、キラキラした目をした、素敵な王子様でした。
    王子様はにっこり笑って言いました。「ありがとう、お姫様。私は悪い魔女に魔法をかけられてカエルの姿にされていたのです。あなたの優しさ…いや、最後はちょっと乱暴だったけど、おかげで魔法が解けました。」

    お姫様はびっくりして、そしてちょっぴり恥ずかしくなりました。
    次の日、立派な馬車が王子様を迎えに来て、王子様はお姫様を自分の国へ連れて行きました。
    そして、二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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