• ミソサザイとクマ

    グリム童話
    太陽がキラキラ輝く朝、クマさんとオオカミさんが森をテクテク歩いていました。
    すると、どこからか、とってもきれいな歌声が聞こえてきました。「チチチ、チュチュチュ、なんて素敵な声だろう!」
    クマさんは言いました。「オオカミさん、今の歌声は誰だい?ぜひ会ってみたいな。」
    オオカミさんは答えました。「あれは鳥の王様、ミソサザイさんですよ。でも、王様には近づかないほうが…」
    クマさんは「王様だって?それなら、そのお城も見てみたいもんだ!」と、オオカミさんの言うことを聞きません。

    オオカミさんは心配そうに後をついていきました。
    ミソサザイのおうちは、木の枝の間に作られた、小さくて可愛らしい巣でした。
    クマさんは巣をのぞき込んで、大きな声で言いました。「なんだい、これが王様のお城だって?ずいぶんみすぼらしいじゃないか!」
    巣の中では、ミソサザイのヒナたちがブルブル震えています。
    そこへ、お父さんミソサザイとお母さんミソサザイが帰ってきました。
    「なんてことを言うんだ!僕たちの子供を怖がらせて!これは立派なお城だぞ!」ミソサザイはカンカンに怒りました。
    「お前みたいな大きなやつに、僕のお城をバカにされてたまるか!戦争だ!」ミソサザイは叫びました。
    クマさんは鼻で笑いました。「ハッハッハ、お前みたいなちびっこと戦争だって?面白い!」
    でも、ミソサザイは本気でした。

    ミソサザイは、空を飛ぶ仲間たち、ハチやトンボ、チョウチョ、カラスやフクロウまで、みんな集めました。
    クマさんも負けていません。森の四つ足の動物たち、シカやイノシシ、ウサギ、そして地面を這うムカデやアリまで、みんな呼び集めました。

    いよいよ戦争が始まります。クマさんはキツネさんを呼びました。「キツネくん、君は賢いから、敵の様子を探ってきてくれ。もし攻撃の合図なら、しっぽをピンと立てるんだ。もし退却なら、しっぽをダランと下げるんだぞ。」
    ミソサザイも、小さなブヨをスパイに送りました。「ブヨくん、敵の作戦をこっそり聞いてきておくれ。」
    ブヨはフワフワ飛んでいき、キツネさんとクマさんの話を立ち聞きしました。

    次の朝、両軍がにらみ合いました。
    キツネさんは、ミソサザイ軍の様子を見て、「よし、今だ!攻撃開始!」と、しっぽをピンと高く上げました。
    その瞬間、ブヨがキツネさんのしっぽの先にチクリ!
    「イタッ!」キツネさんは思わずしっぽをブルンと振って、ダランと下げてしまいました。
    それを見たクマさんの軍隊は、「あれ?退却の合図だ!逃げろー!」と、大慌てで逃げ出してしまいました。
    ミソサザイ軍は「ワーッ!」と喜びの声をあげました。

    クマさんは、小さなミソサザイの知恵にすっかり感心しました。
    「ミソサザイさん、君のお城をバカにして本当にごめんよ。君は本当に鳥の王様だ。」クマさんは心から謝りました。
    ミソサザイのヒナたちも、もう怖くありません。お父さんとお母さんは、とっても誇らしそうでした。
    こうして、森にはまた平和が戻り、ミソサザイのきれいな歌声が響き渡るのでした。

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