• 悪魔の汚い兄弟

    グリム童話
    戦争が終わって、お家に帰る一人の兵隊さんがいました。でも、お給料はほんのちょっぴり。「これじゃあ、お腹いっぱいご飯も食べられないや」と、しょんぼりしていました。

    兵隊さんがトボトボと森の中を歩いていると、どこからか変な声がしました。「おい、兵隊さん、ちょっと待ちな」。
    見ると、そこに立っていたのは、真っ黒な顔に、燃えるような赤い服を着た、角のある男。そう、悪魔です。
    悪魔はニヤリと笑って言いました。「わしのために7年間働いてみないか?その間、顔も体も洗っちゃだめ。髪も爪も切っちゃだめ。いつもすすまみれでいるんだ。もしそれができたら、お前さんを一生遊んで暮らせる大金持ちにしてやろう。でも、できなかったら、お前さんはわしのものだ」。

    兵隊さんは考えました。「7年間かあ。長いけど、お風呂に入らないのも、髪を切らないのも、まあ我慢できるかな。それで大金持ちになれるなら…よし!」
    「わかりました!やりましょう!」兵隊さんは元気よく返事をしました。

    それから7年間、兵隊さんは悪魔の家で、火の番をしたり、大きな釜で何かを煮たり、悪魔の言いつけを何でも聞きました。もちろん、お風呂にも入らず、髪も爪も伸び放題。体はすすと泥で真っ黒け。まるで「悪魔のきたない兄弟」そのものです。周りの小さな悪魔たちも、最初は気味悪がっていましたが、だんだん慣れて、兵隊さんの伸びた爪で遊んだりするようになりました。

    とうとう7年が経ちました。悪魔は満足そうに言いました。「ようやった、ようやった。お前さんは約束をちゃんと守ったな。さあ、これが褒美だ」。
    悪魔が兵隊さんに渡したのは、すすやゴミがいっぱい詰まった、汚い袋でした。
    「ええ?これだけですか?ただのゴミじゃないですか…」兵隊さんはがっかりしましたが、文句を言っても仕方ありません。

    兵隊さんは悪魔にさよならを言って、森を出ました。そして、袋の中身を確かめようと、そっと開けてみました。すると、どうでしょう!袋の中のすすやゴミが、全部キラキラと輝く金貨に変わっていたのです!
    「わーい!やったあ!」兵隊さんは大喜び。

    まず、兵隊さんはお風呂屋さんへ行って、7年分の汚れをゴシゴシ洗い落としました。それから床屋さんで、伸び放題だった髪と髭を綺麗に整えてもらいました。新しい素敵な服も買って、すっかり立派な紳士に変身です。

    お金持ちになった兵隊さんは、大きな家を買い、賢くて優しいお嫁さんをもらって、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。そして、たまにはお風呂に入って、体を綺麗にすることも忘れませんでしたよ。

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