• 三羽の小鳥

    グリム童話
    あるところに、狩りがとっても上手な王様がいました。ある日、王様は森の奥深くまで獲物を追いかけて、とうとう道に迷ってしまいました。日が暮れて心細くなっていると、小さな家から灯りがもれているのを見つけました。

    「すみません、道に迷ってしまって。」王様が声をかけると、中から一人のおばあさんが出てきました。「おやおや、王様。お困りでしょう。もし、私の美しい娘と結婚してくださるなら、森から出る道を教えてあげましょう。」おばあさんはニヤリと笑いました。王様は助かりたい一心で、「わかった、約束しよう」と答えました。

    ところが、おばあさんの娘は、お世辞にも美しいとは言えない顔立ちだったのです。でも、王様は一度した約束は破れません。仕方なく娘をお妃としてお城に迎えました。

    王様には、前の奥さんとの間に、賢くて優しい男の子がいました。新しいお妃様は、この男の子のことがどうにも好きになれません。「この子さえいなければ、私の子どもが王様になれるのに…」ある日、お妃様はこっそり魔法を使って、男の子を小さな白い鳥に変えてしまいました。かわいそうな白い鳥は、お城の窓から悲しそうに飛び去るしかありませんでした。

    しばらくして、お妃様は王様との間に二人のかわいい赤ちゃんを授かりました。一人目の子が生まれると、お妃様はまた思いました。「この子もいつか私の邪魔をするかもしれないわ。」そして、その子も魔法で小さな鳥に変えて、森へ放してしまいました。二人目の子が生まれたときも同じです。お妃様は自分の子どもたちまで鳥に変えてしまったのです。

    森で出会った三羽の小鳥たちは、実は兄弟だとは知りませんでしたが、なぜかとても気が合いました。一番大きな白い鳥が、まるで長男のように他の二羽の面倒を見ました。

    ある日、三羽が森を飛んでいると、別の親切なおばあさんの家を見つけました。おばあさんは三羽の小鳥を見て言いました。「まあ、かわいそうに。あなたたちは悪い魔法で鳥にされてしまったのですね。これをあげましょう。」そう言って、おばあさんは三羽に、願いが一つだけかなう不思議な木の実と、吹くと何かが起こる小さな笛をくれました。

    一番大きな白い鳥が木の実にお願いしました。「僕たちが安心して暮らせる、立派なお城がほしい!」すると、目の前にあっという間にきらびやかなお城が現れました。三羽の小鳥たちは大喜びで、そのお城で楽しく暮らし始めました。

    一方、子どもたちがいなくなってしまった王様は、毎日悲しみに暮れていました。ある日、狩りの途中で、森の奥に見たこともない立派なお城を見つけました。「こんなところに誰が住んでいるのだろう?」王様が近づくと、お城の窓から三羽の小鳥が顔を出し、美しい声で歌い始めました。そして、一番大きな白い鳥が持っていた小さな笛を吹くと、なんと三羽の小鳥たちは、三人の美しい若者の姿に変わったのです!

    一番年上の若者が王様に言いました。「お父様、私たちです!意地悪なお妃様の魔法で鳥にされていましたが、親切なおばあさんのおかげで、こうして人間の姿に戻ることができました。」

    王様は驚き、そして心から喜びました。すぐに国へ戻り、意地悪なお妃様のしたことをみんなに話し、お妃様を遠い国へ追い出してしまいました。

    その後、王様と三人の子どもたちは、森の新しいお城で、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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