• ライラックの花

    グリム童話
    空の星がきらきら輝く、とあるお城に、心優しいお妃さまが住んでいました。でも、お妃さまには一つだけ、大きな悩みがあったのです。それは、かわいい赤ちゃんがいないことでした。

    ある晩、お妃さまの夢に、きれいな妖精が現れて言いました。「あなたに、この不思議なカーネーションの種をあげましょう。願いを込めて育てれば、きっと可愛い赤ちゃんが生まれますよ。」

    お妃さまは、それはそれは大切にカーネーションを育てました。すると、本当に可愛らしい女の子の赤ちゃんが生まれたのです!お城中が大喜びしました。赤ちゃんは、まるでカーネーションの花のように愛らしいお姫さまでした。

    しばらくして、王さまがお城を留守にすることになりました。お城には、意地悪な料理番の女がいました。この料理番は、お妃さまとお姫さまがうらやましくてたまりません。「よし、私がお妃さまの代わりに…」料理番は悪いことを考えました。

    料理番は、お妃さまを「もっと景色の良いお風呂がありますよ」と騙して、塔のてっぺんにある薄暗いお風呂場に閉じ込めてしまいました。そして、自分のあまり可愛くない娘をお妃さまのベッドに寝かせ、お妃さまのふりをさせたのです。

    閉じ込められたお妃さまは、悲しくて悲しくて、どうしたらよいかわかりませんでしたが、ふと窓から見えるカーネーションに祈りました。すると不思議なことに、お妃さまは白いアヒルの姿に変わり、小さな窓から飛び立つことができました。

    夜になると、白いアヒルはこっそりお姫さまの部屋へ飛んでいきました。そして、優しくお姫さまに歌いかけるのでした。「私の可愛い赤ちゃん、元気でいるかしら?悪い料理番にいじめられていないかしら?」そうして、お姫さまの世話をしました。

    王さまが旅から帰ってきました。料理番の娘がお妃さまのふりをしているので、最初は気づきません。でも、夜中にどこからか悲しいアヒルの歌が聞こえてくるのです。そして、お姫さまがいつもきれいで、誰かがこっそり世話をしているようでした。

    王さまは不思議に思い、ある晩、剣を持ってこっそりお姫さまの部屋を覗いてみました。すると、白いアヒルがお姫さまに歌いかけているではありませんか!王さまが驚いて声をかけると、アヒルは人間の言葉で話しました。「私は本当のお妃です!あの意地悪な料理番に閉じ込められたのです!どうか、その剣で私の頭の上を三回振ってください。そうすれば、元の姿に戻れます。」

    王さまはびっくりしましたが、言われた通りに剣を三回振りました。すると、白いアヒルはみるみる美しいお妃さまの姿に戻りました!

    王さまはカンカンに怒りました。意地悪な料理番とその娘は、すぐに捕まえられ、お城から遠い遠いところへ追い出されてしまいました。

    こうして、王さまとお妃さまと可愛らしいお姫さまは、いつまでも幸せに暮らしました。お城の庭には、お妃さまが大切に育てたカーネーションが、いつまでも美しく咲いていたそうです。

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