あるところに、意地悪な魔女のお母さんがいました。このお母さんには二人の娘がいましたが、一人は自分の本当の娘で、もう一人はまま子でした。魔女は自分の娘をとっても可愛がり、まま子のことは大嫌いでした。

ある晩、魔女は考えました。「今夜、まま子が寝たら、こっそり部屋に入って、悪い魔法をかけてやるんだ！」と、怖いことを企んでいました。でも、運よくまま子はその話をこっそり聞いてしまったのです。

そこで、夜になると、まま子はそーっと自分の本当の娘とベッドを入れ替えました。真夜中、魔女がやってきて、暗闇の中でまま子だと思って自分の娘に魔法を…ああ、なんてことでしょう！魔女は間違えて、自分の本当の娘に魔法をかけてしまったのです。

女の子はすぐに恋人のローランを起こし、「ローラン、逃げましょう！お母さんが私にひどいことをしようとしたの！」と伝えました。ローランもびっくり。「よし、行こう！」二人は魔女の魔法の杖をこっそり持って、急いで逃げ出しました。

朝になり、魔女は自分のしたことに気づいてカンカン！「あの二人、追いかけてやる！」と、すごい速さで追いかけてきました。
「どうしよう、追いつかれちゃう！」女の子が言うと、ローランは「大丈夫、僕に任せて！」と言って、杖を振りました。すると、女の子は美しい野ばらの茂みに、ローランはその中で一番きれいな一輪のバラになりました。魔女がやってきましたが、まさかそれが二人だとは思いもせず、通り過ぎてしまいました。

二人はまた元の姿に戻って逃げましたが、また魔女が！今度は女の子がバイオリン弾きに、ローランがそのバイオリンになりました。魔女は音楽があまり好きではなかったので、また気づかずに通り過ぎました。

三度目の正直、また魔女が！今度は女の子が大きな池に、ローランがその池で楽しそうに泳ぐ一羽のカモになりました。魔女は池の水を飲もうとしましたが、カモがバシャバシャと水をかけて邪魔をしました。魔女はとうとう諦めて、家に帰ってしまいました。

やっと安心した二人。ローランは言いました。「ここで待っていて。お父さんのところへ行って、結婚式の準備をしてくるから」と。女の子はローランを待つ間、寂しくないように、一本の赤い花になって野原に咲いていました。

でも、ローランは家に帰る途中、別のお姫様に出会い、なぜか女の子のことをすっかり忘れてしまいました。そして、そのお姫様と結婚することになったのです。

赤い花になった女の子は、その話を聞いてとても悲しみました。結婚式の日、女の子は人間の姿に戻り、お城へ行きました。そして、ローランにしか分からない、二人の思い出の歌を歌い始めたのです。

その歌声を聞いた途端、ローランは全てを思い出しました！「ああ、僕の本当の花嫁は君だったんだ！」
ローランはすぐに女の子の元へ駆け寄り、二人で本当の結婚式を挙げました。そして、いつまでもいつまでも、仲良く幸せに暮らしましたとさ。

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