踊れ、踊れ、私の人形!
アンデルセン童話
あるところに、カレンという名前のかわいい女の子がいました。カレンはとっても貧乏でしたが、おしゃれが大好き。特に、ピカピカの赤い靴に憧れていました。
ある日、親切な靴屋のおばあさんが、カレンにぴったりの、それはそれは美しい赤い革の靴を作ってくれました。「わあ、なんて素敵なの!」カレンは大喜び。
次の日曜日、カレンは早速その赤い靴を履いて教会へ行きました。本当は教会へ行くときは、地味な靴を履くのが決まりだったのですが、カレンは赤い靴をみんなに見せたくてたまりません。お祈りの間も、歌を歌っている間も、カレンの頭の中は赤い靴のことばかり。「私の靴、素敵でしょう?」
教会が終わると、不思議なことが起こりました。カレンの足が、勝手にトントントンと踊り始めたのです。「あれ?止まらない!」カレンはびっくり。赤い靴はカレンの言うことを聞かず、教会の外へ、町の中へ、どんどん踊り進んでいきます。
「助けて!止まって!」カレンは叫びましたが、赤い靴はくるくる、ぴょんぴょん、踊るのをやめません。野原を越え、森を抜け、昼も夜も踊り続けました。カレンはくたくた。もう涙も出ません。
「お願い、もう踊りたくないの!」カレンが心からそう叫んだとき、ちょうど通りかかった木こりのおじさんが、カレンの足元を見て驚きました。「お嬢ちゃん、その靴は魔法の靴だね。わしが何とかしてあげよう。」
木こりのおじさんは、持っていた斧で、えいっと赤い靴の留め金を叩き壊してくれました。すると、赤い靴だけがカレンの足からスポンと抜けて、それでもまだカタカタ、トントン、踊りながら遠くへ行ってしまいました。
カレンは、やっと自由になれました。もうピカピカの赤い靴はありませんでしたが、自分の足でしっかり立てることが、こんなに嬉しいなんて。カレンは、おしゃれよりも大切なことがあると気づき、それからは真面目に、心優しく暮らしたということです。
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