太陽の光ととらわれびと
アンデルセン童話
空のずっとずっと高いところ、お日様がニコニコ笑っていました。ある朝、お日様が大きなあくびをすると、キラキラした光のかけらがひとつ、ぽろんと生まれました。
「わあ、世界はどんなところかな? 探検に行きたいな!」光のかけらは思いました。名前はまだありません。でも、みんなは「おひさまの光くん」と呼ぶことにしましょう。
光くんは、しゅーっと地上に降りていきました。
最初に見つけたのは、しょんぼりしている小さなお花でした。「どうしたの?」光くんが優しく声をかけると、お花は「なんだか元気が出ないの…雨も降らないし、寂しいわ」と小さな声で答えました。
光くんがお花をそっと照らすと、あら不思議!お花はしゃんとして、きれいなピンク色の花びらを嬉しそうに開きました。「ありがとう、光くん!あなたのおかげで元気が出たわ!」
次に光くんは、丸くなって眠っている子猫を見つけました。子猫は「にゃー…なんだか肌寒いよう」と夢の中でつぶやいています。光くんが子猫のお腹をぽかぽか温めると、子猫は「んー、あったかい!」と目を覚まし、気持ちよさそうにゴロゴロとのどを鳴らしました。そして、元気いっぱいに遊び始めました。
窓からお部屋を覗くと、一人の男の子がため息をつきながら、つまらなそうに外を眺めていました。「外で遊びたいけど、なんだか気分が乗らないなあ」
光くんがキラキラと部屋に入っていくと、男の子は「わあ、お日様だ!」と顔を輝かせました。光が床に素敵な模様を作ると、男の子は嬉しくなって、すぐに外へ駆け出していきました。光くんも一緒に、追いかけっこをしたり、かくれんぼをしたりして遊びました。
光くんは、みんなを笑顔にするのが大好きになりました。「僕の光は、みんなを元気にするんだ!嬉しいなあ!」
夕方になり、お日様が「おーい、光くん、そろそろ帰っておいで」と呼びました。光くんは「はーい!みんな、また明日ね!」と手を振って、空へ帰っていきました。
次の日も、その次の日も、おひさまの光くんは地上にやってきて、お花を元気にし、動物たちを温め、子どもたちと遊んで、たくさんの笑顔を咲かせましたとさ。
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