• トゥルーデおばさん

    グリム童話
    あるところに、とっても知りたがりで、ちょっぴり言うことを聞かない女の子がいました。
    その女の子は、近所に住むトルーデおばさんという人の噂を聞きました。トルーデおばさんの家はなんだか不思議で、ちょっと怖いという話です。

    お父さんとお母さんは言いました。「トルーデおばさんの家へ行っちゃいけないよ。あそこは怖いところだからね。それに、あのおばさんは良い人じゃないんだ。」
    でも、女の子はどうしてもトルーデおばさんの家が気になって仕方がありません。「大丈夫よ!ちょっと見てくるだけだもの!」
    そう言って、女の子はこっそり家を抜け出して、トルーデおばさんの家へ向かいました。

    トルーデおばさんの家の前に着くと、なんだか空気がひんやりしています。
    女の子が階段を上がろうとすると、まず、石炭みたいに真っ黒な男の人を見ました。
    「こんにちは!」と女の子は言いましたが、男の人は黙って通り過ぎました。
    次に、葉っぱみたいに緑色の服を着た男の人を見ました。
    「こんにちは!」とまた言いましたが、その人も何も言いません。
    それから、血のように真っ赤な服の男の人も見ました。
    その人も、女の子には目もくれません。

    とうとう一番上の段まで来ると、そこには、なんと頭が火のようにメラメラ燃えている、大きな角の悪魔が立っていたのです!
    女の子はびっくりして後ずさりしそうになりましたが、勇気を出して言いました。
    「こんにちは…トルーデおばさんのおうちですか?」
    悪魔はニヤッと笑うと、黙ってドアを指さしました。

    女の子はドキドキしながらも、ドアをノックしました。
    「はい、どなた?」
    中から出てきたのは、トルーデおばさんでした。目はギラギラしていて、なんだか普通の人間ではないような雰囲気です。
    「まあ、よく来たね。途中で何か面白いものを見たかい?」トルーデおばさんが尋ねました。

    女の子は正直に答えました。
    「はい!まず、真っ黒な男の人を見ました。」
    「ほう、あれは炭焼きだよ。」とトルーデおばさん。
    「次に、緑色の男の人を。」
    「あれは狩人さ。」
    「それから、真っ赤な男の人も。」
    「ふむ、あれは肉屋だね。」
    「そして、おばさんの家の階段には、頭が火みたいに燃えている悪魔がいました!」

    それを聞くと、トルーデおばさんは大きな声で笑いました。
    「そうかい、そうかい!あれはね、私の一番のお友達さ!お前さんは、ちゃんとした格好の私を見るべきだったのさ!」
    そう言うと、トルーデおばさんは女の子をポンと一本の木の薪に変えてしまいました。
    そして、その薪を暖炉の燃えさかる火の中にポイッと投げ入れて、こう言いました。
    「これでやっと明るくなったわい。いい光だこと!」

    だからね、お父さんやお母さんの言うことは、ちゃんと聞いたほうがいいのかもしれませんね。

    1671 閲覧数